すのぼーい１２【男主】 (ページ13)

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＊全ては俺の甘えがページ13

茅ヶ崎翔太になる準備してくれませんか

聞き間違えでなければアイツが30歳になった時
そう言われたことがある。

ふざけてそんなことを言うことはこれまでもあったけど
あの日はそんな感じじゃなくて。
ましてやファンの子へのサービスでもなんでもない
2人だけの部屋だったし。

俺がアイツを特別に思うように
アイツも俺のことを特別に思ってくれているのかもなんて
ガラにもなく期待した。

その後、佐久間と康二に邪魔をされてその話は
あやふやになってしまってしまったし
それから俺たちの関係が何か変わったかと聞かれたら
本当にそんなことを言われたのか自分の記憶を
疑ってしまうくらいには何も変わらなかった。

だけど

「準備」

その言い回しがアイツらしいと思った。

あの言葉をもらった後、俺からそのことについて触れようと
思えばいつだってできるタイミングはあった。
なんなら佐久間と康二をすぐに追い払って
その話をすることだって出来た。

それをしなかったのはその一歩を自分から踏み出すのが
怖かったからなのか、メンバーではない新しい関係を
築くことに対しての漠然とした不安からなのか

そんな俺の気持ちはアイツにバレバレだったから
あの時、「準備」って言葉を使ってくれたのだと
俺の気持ちの整理がつくのを待ってくれているのだと
アイツの気遣いに胸が熱くなった。

だから、またいつかAからその話をしてくれたら
いいなって。その時はもう少し素直にAへの
気持ちを伝えたいなって。
そんな風に甘えていたからバチがあたって
しまったのかもしれない。

その日も勝手にAの家に上がり込んで
アイツの帰りを待っていた。
連絡しないで上がり込むことなんて
これまでも沢山あったし
まあ、一回だけ。怒られて合鍵没収
されたことはあったけど。うん。

あれはやっぱりまだ思い出には出来そうにないな。

そんなことをアイツのソファの上で考えていたら
ガチャンって玄関が開く音が聞こえて。
珍しく乱暴に開けるじゃんなんて思いながら
ソファに座ったまま首を音がなった方に向けると

渡「おかえり〜。A、え？」

　『え、っと。お邪魔します。
　え？ちょ、A！渡辺くんいるから
　ピッとして！重たいッ！』

　「あれ？しょーたんだぁ」

俺の知らない女性に支えられながら
酔っ払っているのかふわふわして帰ってきたAと
迷うことなく寝室にAを運ぶその人

想像すらしていなかったその光景に眩暈がした