ウソつきはアイドルの始まり (ページ8)

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そこにいたのはパク・ジニョン氏。
そう、JYPの代表でプロデューサーだ。

自分は慌てて立ち上がると彼に挨拶をする。

「バンチャンに今、今度のサバイバル番組に一緒に出てデビューを目指さないかと誘われているそうだね」

「なぜそれを…」

にこりと笑ったパク氏は自分の肩に手をのせると真っすぐ自分を見つめた。

「君は一緒にデビューしたくないのかい？」

「…本当はしたいですよ。誰よりも彼らをそばで見てきたんです。でも」

「性別が違うから？」

そういわれ、ゆっくりと頷く。
ふむ、と考え込んでしまう様子を見ているとふとこちらに顔をむけた。

「じゃあ男装すれば問題ないよ」

「………え？」

代表の口から出た言葉は耳を疑うような言葉だった。
いま、なんと。

「幸いにもバンチャン以外は君を完全に男だと思っているだろうし周りだってそうだ。男のフリをすればばれやしないよ」

「いや、でも」

「一緒にデビューをめざしたいのだろう？バレたときのことは心配しなくていい」

その言葉を聞き、口を噤んだ。
ここで頷けば彼らとともにデビューを目指せるが一生ばれてはいけない嘘をつき続けることとなる。

自分は今、何がしたいのか。

女を捨てて男のフリをしてまで彼らとともにいたいのか。
その答えは簡単だった。

「…チャニ”ヒョン”のところへ行ってきます」

自分は代表に挨拶をするとレッスン室から彼のいる作業部屋へ走る。
すれ違う皆が自分を見るが関係ない。

ノックもせずに扉を開けるとチャニは驚いた顔をしていて息を整えると彼をまっすぐ見つめる。

「自分も仲間に入れてほしい。一緒にデビューを目指させてほしい！」

そういうとチャニは驚いた顔をしたまま自分の腕を引き寄せて抱きしめた。
「夢？」とつぶやいているチャニに笑いながらも「夢じゃない、これからもそばにいさせてよ」というと力強く腕を回された。

「どういう心境の変化？」

「代表に言われたんだよ。ヨジャアイドルとしてじゃなくてナムジャアイドルとしてデビューを目指せばいいって」

「え！？」

身体を離し、私を見ると「正気？」といった顔だ。
自分は正気だ。いつだって。

「ずっと一緒にいても気が付かれないほどなら逆にそれを武器にすることにしたよ」

くすくすと笑いながら言うと申し訳なさそうな顔をするチャニ。
チャニの頭をなでると困ったように笑った。

「一緒に目指そう。アイドルを」

「君がいると何倍も心強いよ」

そしてこの物語は始まったのだ。