ウソつきはアイドルの始まり (ページ49)

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「小さいって言っても平均だよ」

「僕にとっては小さい」

なんて言いながら握っていた自分の手の指と彼の指が絡まれる。そしてぎゅ、っと握られた。

「スンミナ？」

「Aヒョンがそんな顔をしていたらきっと皆心配しちゃうから僕がそばにいてあげます」

なんて言われて自分がそんなに酷い顔をしているのだと気がついた。目の前に鏡があるのに自分が見えなくなっていたのだ。

「ごめん、」と一言謝ると彼の空いている手が自分の頭を撫でた。

「僕はAヒョンの味方ですよ」

「っ、」

そんなことを言われたら目頭が熱くなるではないか。
涙を耐えていると手が離れていき、彼は自分を包み込むように抱きしめた。

「大きく、なったね、スンミナ」

「ヒョンが大きくしてくれたんだ」

だから少しはよりかかってよ、なんて言われる。
そんな彼の背中に腕を回すってぎゅっとしがみつくように抱きしめた。

「"ごめんね、ごめんなさい、っ"」

ほろほろと流れる涙。謝っても何も変わらないことはわかっている。
でも自分は大人気なく彼に甘えてしまった。
何度も何度も繰り返して謝り、ただ彼はそれを背中を撫でながら黙って聞いてくれていた。

自分が落ち着いてきたころに彼は「大丈夫？」と聞いてきたのでその言葉にこくりと頷くとそっと体を離し、彼の袖で自分の頬をぬぐってくれた。

「ごめんね」

「もう謝らないでよ。ヒョンは自分のことでは滅多に泣かないから頼ってくれてうれしい」

なんていうとぽんぽんとまた頭をなでてくれた。
彼はよく邦楽を聞いているから”ごめん”という日本語が謝るときの言葉だと知っていたのだろう。
少し、恥ずかしくなる。

「僕、実はAヒョンに言ってない秘密があるんです」

彼は再度手を握ってくると真っすぐと見つめてきた。
彼の眼を見つめ返すと彼は緩く目を細める。

「でも教えてあげない」

そういうと彼はいたずら気に笑う。

「だから僕がこの秘密をAヒョンに伝えるときにAヒョンも教えて。今日泣いてた理由を」

その言葉は今は教えなくていい、そういう意味だろう。
自分が泣いている理由を言いたくないだろうから、と気を使ってくれたのだ。

「…スンミナは昔から優しいね」

「ヒョンにだけですよ」

「…ありがとう」

お礼を言うと彼はまた優しく笑ってくれた。

きっと彼は今後、自分にその秘密を教えてくれることはないだろう。
自分たちがそばにいるためなのだから。