ウソつきはアイドルの始まり

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「A」

みんなの前に出るように彼女の名前を呼ぶ。
するとはー、とため息が聞こえ一歩ずつ前にでると僕の横に並んだ。

「おまたせ、メイクヌナが気合い入れちゃって」

ははは、と笑う彼女。
仕草はできるだけ男性にしようと心がけているのか立ち姿は完全に男そのもの、だが見た目が完全に女性のため意味が無いだろう。

「いや、ほんと....え....」

「ヒョンが...ヌナで....」

チャンビンとイエナも混乱しているようで頭の先からつま先までをみる。

すると彼女は僕の腕を掴むと恥ずかしそうに顔を逸らした。
可愛すぎて心配になる。

「あまり見ないで欲しいんだけど...」

「見ない方が無理だよ〜！！」

そういうとヒョンジンがAに近づき、それに続くかのように彼女を囲む。

「わぁ...本当に、女の子にしか見えないね」

「ヒョンすごく可愛い」

「はは、そんなに褒めても何も出ないよ」

でもありがとう、と笑うとリノと目が合ったようで彼女の顔が明るくなる。

そして僕の腕から離れるとリノの元へいってしまった。
ここで引き止めるのは不自然のため、ぐっと我慢して見守る。

「ヒョン！すごく可愛い！」

「お、ぁああ...ありがとう」

リノの顔を見てキラキラな笑顔をうかべるA
きっとみんな心の中で「君の方が可愛い」と思っているだろう。

「本当に可愛い」

ぼそっとつぶやく声が聞こえてそちらを見るとスンミンが呟いていたようで彼女に近づいていく。

「どうしよう、いつもよりドキドキしちゃう」

「僕もどうやって接すればいいかわかんない...」

フィリックスとイエニはそんなことを二人で話していた。
そんな二人に「いつものように接すればいいよ。Aであることは変わりないんだし」と言った瞬間Aの「わ！！」という驚いた声が聞こえた。

そちらを見ると彼女はスンミンにいつものように捕らえられており、後ろから抱きしめられていた。

「可愛いね〜ヒョン」

「スンミナも可愛いね、リノヒョンと服がお揃いで」

Aがそう言うとリノとスンミンは明らかに嫌な顔をした。
いつものように会話する二人を見てほっとしたのか二人もそこへ混ざりに行く。

「撮影始めまーす」

その言葉が聞こえてようやく僕もその輪に入る。

本当に何も無く終わればいいのだけど。
そんなことを思いながらも撮影は始まった。

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