モトカノ依存症【吉沢亮】 (ページ8)

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episode8 ページ8

キーンコーンカーンコーン…

“亮ー、今日飯行かん？”

『…あーちょっと待ってて。』
“え？お？”
“あー今日そっか～ホワイトデーだもんね”

終礼のチャイムが鳴ると席の周りに集まる友人たち
男が持ち歩くには不格好な淡い水色の紙袋
それを持つ俺にニヤニヤと笑みを浮かべている

『何でついてくんだよ』

俺のクラスと彼女のクラスは一クラス挟んですぐ。
終礼が終わってすぐならいると思い、彼女のクラスまで向かう

そんなに人の恋愛に興味あるのかこいつらは。
隆以外の2人は何度か彼女を廊下で見たことがあるという

“大胆だよなーあの子も。”
“でも亮も気があるんだろ？いいな～”

『…別に気があるわけじゃない』

義理チョコといって何人かから貰ったが、彼女だけはいかにも本命。
返さないのも何かと思って買っただけだ

“またまたー”
神木:あ、いるじゃん

彼女のクラスまで行くと隆が先に覗いて彼女を見つけた
何でそんなすぐ見つかるんだ？

廊下側の窓から覗くと、教室の中にはもう数名ほどしか残ってなかった
こちらに背を向けている子が背の高い女子と話していた

…あ。あの子か。

背の高いその子がこちらに気付くと彼女の肩を何度か叩き何やらこちらを指さした
…
こちらに気付いた彼女が目を丸くして驚いていた

「…え？」
『この前貰ったから』

チラッと俺の後ろにいる友人たちを見た後だったと思う
ゆでだこみたいに顔を赤く染めて俯き気味に顔を隠す

「あ、ありがとう…」

『…ちゃんと持って。』

震えてなかなか受け取れない彼女の手に自分の手を添えた
いつも震えている彼女の手は凄く冷たい
手を添えて渡すと顔を上げない彼女をまじまじと見ると、硬直していた

「…あ、あり…ありがとう。」

その時の彼女のことはよく覚えている

今にも、なんか泣きそうな顔で喜んでた
特に思い入れもない俺のお返しなんかに

可愛いって少し思った

“吉沢君、意外と優しいね～もっと冷たい人かと思ってた”
“よかったねA～”

「…吉沢君、優しいかな。」