episode6 ページ6
「吉沢くんいますか…」
翌日、彼女が俺の教室の前まで来た
きょろきょろと廊下から教室の中を見渡していたところをミカが声かけた
ミカ:りょーーーう。呼ばれてるよ
教室の角にいる俺の席まで聞こえるバカでかい声で名前を呼ばれ、クラスメイトの視線は一斉にこちらへ向けられた
…何でまた来るかな。
怠そうに立ち上がると隣の席の隆にケツをたたかれた
こういうのは本当に苦手だ
大して興味もないのに面白半分で冷やかしてくる奴らも
空気を読まずに来る彼女も
『…何?』
彼女の元へ行くと彼女はスマホを片手に持っていた
何もロゴのない透明なケース
「…登録、できなくて。今交換してもいいかな…」
『ああ。うん』
目の前でスマホを起動させる彼女
俯き加減になった時に初めてまじまじと彼女の顔を近くで見た
特別「美人」とか「可愛い」という印象はなかった
どこにでもいそうな子で、多分何百人と人が集まる場所で彼女を見つけるのは難しいぐらい
それぐらい普通な子
睫毛が長く、肌もニキビ一つない
…こんな顔してたっけ
「…」
俯いていた彼女が顔を上げた時
まただ。
またこの目
「…これ」
『…あ、ああ。』
苦手だった。物凄く
長い睫毛の奥から覗く真っすぐな目が
「…ありがとう」
それだけ言って彼女は戻っていった
…
最初にはっきり断っておけばよかったと後悔した
断っておけばそれ以上彼女と関わることもなかったのに
・
・
あの頃、何に対しても被害者面だったと思う
誰かに幸せに「してもらいたい」
誰かに傷つけ「られた」
大切にしていたっていつか無くなってしまうのなら何とも思わなければいいんだって
自分が苦しくなければよかった
出来るだけ面倒くさいことからは避けて、そういう風に年を重ねるはずだった
全部全部、彼女が悪いんだと
俺なんかのこと見つけて好きになる彼女が悪いんだと
俺は悪くない
そう言い聞かせていた
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キャラメル味(プロフ) - この作品を待っていました!楽しみです!作者さんのペースで更新頑張ってください! (2021年2月2日 20時) (レス) id: e1584a2181 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:君との時間。 | 作成日時:2021年1月31日 11時