モトカノ依存症【吉沢亮】 (ページ15)

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episode15 ページ15

ガチャッ

『ただいま』

上京してから実家に帰るのは初めてだった
約2年ぶりに帰っても静まり返ったこの家

結婚して家庭を持つ兄、再婚して男の家に住む母
唯一残ったこの家は物置のような存在になっていた

冷蔵庫の中は空っぽ
庭は雪が積もって窓から見る景色は一面白銀

冷え切った部屋を暖めるようとエアコンにスイッチを入れ、ソファーに横になった

朝一に着く夜行バスで帰ってきた為、疲労のせいか睡魔が襲い
横になるとすぐに眠りについた

・

「最後の方」

そんな言い方はしたくないが、終わりに近づいているのは実感していた
彼女に初めて声をかけられたあの日が始まりだと言うなら
最後の方の俺たちは本当に他人だったのかもしれない

愛情表現が苦手だけど「好き」だと言ってくれる

すれ違う時に目が合うと赤面する

食べるのが好きなのに俺の前で全然食べないところ

流されるまま付き合っていたつもりが、ちゃんと彼女のこと見てたんだって
認めたくなかった

彼女より俺の方が好きなんて気付きたくなかった

遅くてもいいから返信を待っていて
いつでもいいからデートに誘ってほしかった

『…』

吉沢君

俺の名前を呼ぶ時
いつも彼女は少し照れ臭そうに呼ばれると少し悲しかった

他人行儀に苗字で呼ばれることが

まるで終わりの日がいつか来ることを分かっていたみたいに。

・

神木:おー！亮ーおせーよ！

『ごめんごめん。』

成人式の会場は言わんとばかりに人が集まっていた

ちらほらと見覚えのある中学の同級生を見かけ、挨拶したり通り過ぎたり
会場までは兄貴が送ってくれた。

“うっそ、吉沢君さらにイケメンになった？”
“ほんとー！垢抜けたねー”

女子は着物姿で、高校の頃と印象が変わる子が何人かいた
色とりどりの華やかな晴れ姿を写真に収める子たちを見ていると、ミカが突っ込んできた

ミカ:あの子まだ見てないけど。

…

『あの子？』

すっとぼけるように眉を上げると、火に油を注ぐように隆が笑った

神木:あ、俺あの子とよく一緒にいた子覚えてる？あの背の高い友達なら見かけたよ

探すつもりなんてない
こんな人混みの中、探し出すなんて無理に決まってる

どんな着物着てるだとか、髪型だとか全く分からないのに

大体今彼女いるわけだし。

『…探すわけないじゃん。』