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「家族」
できるだけその言葉とは遠い存在になろうとしていた
両親が揃っていた頃の記憶はもう思い出せない
父親の顔もぼんやりとしか思い出せない
母親とは違う女性を選び、幼かった兄も俺も選ばれなかった
母親に引き取られ、離婚してからは母親は朝から晩までパート勤め
休みの日は祖父母の家に預けられた
“亮はお父さんによく似てるねえ”
周りからよくそう言われていたことだけは覚えている
だからなんとなく思っていた
母親が俺より仕事を優先するのは別れた父親と同じ顔をしているからなんだと
今となっては違う理由があるにしろ
幼いながらに思ったのはそのことだった。
期待するだけ、無駄だって思うようになった
悲観的な考えをする俺とは対照的に兄は真っ直ぐに育った。
離婚なんて珍しくもない、俺は自分の家族を作ると言って大学進学と同時に家から出て行った
神木:え、あの子ともう別れたの?
『まあ。』
神木:付き合ったの1ヶ月もなかったんじゃない?
中学生になると自然と注目されるようになった
好きだと告白され付き合う
だけど付き合う度に口を合わせて同じことを言われた
"私のこと本当に好き?"
"どこが好き?"
好きだから付き合ったわけではない
話したこともないのに好きになるはずがない
それは相手も一緒のはずなのに。
結局好きになるのも嫌いになるのも相手からだ
神木:好きなタイプとかないの?
"てか亮って何に興味あんの?"
『…俺のどこ見て好きって言ってんのかなー』
誰かに好きと言われても何とも思えない
何も知らない俺のこと、心の底から好意を寄せてくれる相手などいるはずもない
誰かに告白されて、またフラれて告白されて。
その繰り返しで歳を重ねても
考え方が変わることなど簡単にはなかった
神木:お前は亮どう?
"ないない。まあ顔は良いけど彼氏にしたいと思わないね"
俺たちしかいない屋上で顔を歪める友人二人。
例えそれが異性だとしても想いを寄せ付けてこないだけずっと楽に感じた
『俺もお前はない。』
"言うと思った〜亮と長続きする子なんて現れるのかねえ"
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キャラメル味(プロフ) - この作品を待っていました!楽しみです!作者さんのペースで更新頑張ってください! (2021年2月2日 20時) (レス) id: e1584a2181 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:君との時間。 | 作成日時:2021年1月31日 11時