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Aの住む部屋の隣に部屋を借りた。
元々埋まっていた部屋を空けるのは大変で少し手こずったけど、Aの為やと思って慣れないことも頑張った。
その頑張りもあってか、引っ越した当日から毎日が幸せになった。
毎朝同じ時間に家を出るAを見送ったり、Aの会社から一緒に家まで帰る日もあった。
休みの日にどこかへ出かける私服のAを見た時は、流石に心臓が止まりそうやった。
ただ、いつまで経っても話しかける勇気がなくて、あと一歩のところで足踏みをしてしまう。
そんなことを幼馴染にふと話してみると、何故かすごく喜んだ。
俺が人に興味を持ったという事実が、あいつにとっては嬉しいことやったらしい。
話しかけるチャンスが欲しいと言うと、俺が協力するとまで言ってきた。
折角なら格好良く話しかけようと、ナンパからAを助けるというシナリオまで作って、Aが残業で帰りが遅くなる日を狙った。
Aに怖い思いをさせるのは酷で、ギリギリまで少し躊躇っている自分が居ったけど、そんなことが気にならへんくなるくらい結果は大成功やった。
Aの視界に、もう一度入ることが出来た。
怯えて身体を小刻みに震わせるAが小動物のように可愛くて、優しく笑いかけてくれた日とはまた違った感動やった。
その日一緒に家まで帰ると、俺が隣の部屋に住んでいることを知ったAはすごく驚いていて、でもすぐに受け入れてくれた。偶然引っ越してきたって思ってるみたいやけど、まあそれは誤差の範囲。
数日連絡を重ねて、お互いについてのことをたくさん話した。
と言ってもまあ、Aに関することは大抵知ってはいたんやけど。適度に話を合わせてたら、Aは俺と気が合うと思ってくれたらしい。そういうところは今も単純で可愛いなと思う。
そして気づけば俺とAは恋人になった。
まあ恋人なんて当人同士でただ名前をつけただけの関係やし、ゆくゆくは結婚せな意味はないんやけど、事実上Aのことを手に入れられたと思うと嬉しかった。
ただ、その報告と同時に、これまで俺がしてきたことを幼馴染みに話してしまったことが、俺の最大の失敗やった。
「そんなんただのストーカーや、犯罪や」
「Aさんに全部話せ」
「お前は間違ってる」
善人振るその態度に、腹が立った。
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作者名:キオ | 作成日時:2022年8月24日 6時