16* 《終》 ページ49
*
『…あ、待って』
ベッドに押し倒されてスプリングを背中で受け止める。
首筋に涼太の息がかかったとき、あることを思い出して、先に進むことを躊躇った。
「………待てない、」
『涼太』
「俺、もう１ヵ月以上待ってるんだけど」
名前を呼んで制すると涼太は、むぅ、と唇を尖らせて顔をあげる。
瞳の奥に灯っている熱情の炎。
私も早く涼太に触れたい。
だけど、もやもやした気持ちのまま涼太を受け入れるわけにはいかない。
『…帰れって、言ったじゃん』
「え？なになに？」
『この前、帰り損ねた日…』
「言ってない！」
『言った！なんでまだ居るの？帰って良かったのにって』
この言葉にはかなり傷付けられた。
納得がいく言い訳をしてくれない限り、先に進ませてあげないんだから。
「え？……ああ、だってAが朝までいるなんて初めてだったし、…俺が我慢できなかったのかと思ったから」
『我慢…？』
苦虫を噛み潰したような顔をした涼太が、私の隣にごろんと横になる。
「や、うん…。別になんでもナイヨ？」
『そこ誤魔化すとこ？』
「……ね？」
『涼太』
「……俺が甘えて駄々こねちゃったから帰れなかったのかなー、なんて、思って…」
語尾が弱まったと思ったら、突然ぎゅうっと抱きしめられて息が詰まる。
そう言えば、あの日も涼太はこんな風に私を抱きしめてたっけ。
「本当はいつも帰ってほしくなかった。…ずっと、俺のそばにいてほしかった」
『……』
「だけど、なんか重いじゃん？かっこわるいじゃん？甘えんなとか言われそうじゃん？」
重くなんかない。
かっこわるくなんかない。
甘えてくれていい。
そんな涼太が好きなの。
涼太のありのままを知りたいし、私のことも知ってほしい。
私たちはそうなれるよね…？
『…涼太、』
気まずそうに唇を噛む涼太の名前を呼ぶ。
すき、と自然とこぼれた声。
幸せそうに微笑んだ涼太が私の唇にキスを落とした。
「ねぇ、A」
ぎゅっと手を握られる。
これが私と涼太の、愛してるのサイン。
おわり
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 349人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
∵ R ∵ - 玲於くんがかっこよすぎて、涙が止まりません…(感泣) (2017年4月10日 22時) (
レス) id: bc068a0168 (このIDを非表示/違反報告)
光(プロフ) - 玲於の話好きです。 (2017年1月4日 15時) (レス) id: 37f184468a (このIDを非表示/違反報告)
マダムムラサキ(プロフ) - 風すけさん» ありがとうございます!!読ませていただきます (2016年8月5日 21時) (レス) id: cdbc4f2c0b (このIDを非表示/違反報告)
風すけ(プロフ) - こんにちは、おそくなってすみません。そうですね、なかなか300まで遠いです。今、新しい小説を書いているのでゆっくり300を目指そうと思います。新しいのを見たいって言っていただけてすごく嬉しいです。ありがとうこざいます！ (2016年8月5日 17時) (レス) id: 9031f63977 (このIDを非表示/違反報告)
風すけ(プロフ) - 遅くなってごめんなさい。リクエストありがとうございます。了解しました！ (2016年8月5日 17時) (レス) id: 9031f63977 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：風すけ
| 作成日時：2016年3月9日 15時
