Sugar

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9月、最終週

ソウルの残暑は想像以上にジメッとしていて日本から渡韓し数年経ったがまだ慣れないでいる。

「A〜、サボってないで締め作業して」

「…あつい」

「いや、エアコン効いてるのに」

今日もバイト先のカフェは有難いことにたくさんの人で賑わっていて、閉店ギリギリまでオーダーは絶えることがなかった。

「いやー、それにしてもAは日本人なのにすごく韓国語上手いね？」

大学3年生、同い歳だけれど私が語学堂に1年通った分1学年上のソンチャンは、いつもはしないような愛嬌を含んだかわいらしい声を出すから少し寒気がする。エアコン、効きすぎなのかな。

「…なに。何が目的なの。」

「いやー……それがまだ客、帰ってなくて。」

ソンチャンは私に近づき小声で耳打ちする。

ふんわりと香った柔軟剤の匂いが、鼻の奥をくすぐってしょうがない。

ソンチャンが指を指す方に目を向けると

1人、ありえないくらいデカいスーツケースとボストンバッグを机の横に置き、机の上に突っ伏して眠っている男性がいた。

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