ツンデレ上司 [黄] 番外編

生活の中心 ページ8

その日から俺はAの呼び方を変えた

呼び捨てにした女の子はAだけ。



Aの隣に座っては話しかけてあしらわれ続けた



「Aここわかる？」

「今先生話してるので後でで」



「今度休みどっか行こーや！」

「無理です」



「A鉛筆貸して！」

と1週間聞き続けた次の月曜には
初めてAから話しかけてくれた



「あの…小瀧さん？」

「なに！？ようやく俺の魅力に気づいたん？」

「何言ってるかわかんないですけど、
そんなに鉛筆ないならこれどうぞ。ついでに消しゴムも」

「ええの！？優しいなぁA、好きになりそ」

「冗談はほどほどにしてください。
毎日貸すなら200円損した方がよっぽどマシです」



そう言いつつも耳を赤くしたAは

きっと男と話すのに慣れてへんのやろな、と思った




どうやったらAがもっと話しかけてくれるやろ

どうやったらもっと長くAと話せるやろ




これを考えるのが俺の生活の中心となり、楽しみとなった




ようやく成果が出たのは

ある日Aがゼミに時間ギリギリで来た時



朝ごはんを食べてへんみたいで
ずっとお腹をさすっとるから、ゼミが終わってから


「A！」

「なんでしょう」

「朝ごはん…いらへん？」



俺が行きつけのカフェの紙袋を揺すると
一瞬動物本能を隠せず顔が晴れたけど、

すぐ冷静さを取り戻して



「…いいです、迷惑になるんで」


と教室を出て行きそうになった



「ちょ、ちょっと待って！」

「なんですかもう！」



「迷惑なんかやない！から…

食べようや、一緒に」



不思議そうな顔しとったなぁ、この時

でもその顔を忘れてまいそうになるくらい嬉しい返事が返って来た



「わかりました、じゃあいただきます」

「ええの！？」

「ダメなら帰りますけど？」

「いや！…ほな行こ」



Aを俺のいつもの場所に案内しながらふと思った




なんで俺こんなに必死なん？







「ごめんな？クロワッサンしかないんやけど」

「全然大丈夫です、むしろごめんなさい」

「なんで？俺が誘ったんやん」


「だって…これ小瀧さんの朝ごはんですよね？」



バレとったんか


俺の朝ごはんに買ったクロワッサンとコーヒーやけど

Aがあまりにお腹が空いていそうで
何よりAと話す機会が欲しくて朝ごはんに誘った




女の子が俺と一緒になるために何かを犠牲にするのはよく見とったけど


初めて、俺から進んで女の子のために何かを犠牲にした

仲→←作戦と魔法

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す