私があなたの彼女です [赤緑]

ギリセーフ ページ18

幸いなことにダッシュしたことで
むしろ駅に予定より早く着き

1本早い電車に駆け込む



「ギリセーフ！」


疲れたー！と笑いながら髪を直す神ちゃんと



「なーんや余裕やん」


あっつ、とジャケットを脱いだしげに対し私はヘトヘト



「はぁっ、ちょっと2人ともさ、はぁっ、
それ自分達が、楽しいだけだから…」


まだまだ上がりっ放しの息を落ち着かせようと
背中を丸め脇腹に手を当てる



「言っとくけど私タイトスカートにヒールだからね！？」


「ハハ、ごめんごめん笑」

「何かテンション上がってもうてさぁ笑」


笑いながら手を合わせる神ちゃんと
タオル地のハンカチで額を拭うしげについ口が滑る



「いくら私が昔から2人と駆け回ってたからって…」



「…昔？」


不思議そうに首を傾けるしげ



「…あ、そのーほら、高校時代、その…」


一緒に登下校、と咄嗟に言おうと思ったけど
ツバキちゃんとのことを思い出すリスクを考えたら頭が真っ白



「A走るの好きやからさ、よう3人で体育前走ってたんよ笑」


幼稚園の頃の思い出を高校時代として話す神ちゃんを



「はぇーそうなんや笑」


一切疑わずに自分の忘れた記憶として受け入れるしげに



少しホッとすると同時に

ズン、と胸が重たくなった気がした




「Aちゃん追いつけたん？
今まぁまぁへっぽこ走りやったで？笑」

「無理無理、これでもマシになった方笑」



「ねぇ！」


2人して私をからかうから思わず怒り口調になる



しげの記憶がなくなって少し経ち
3人でいる時の会話は以前とほぼ同じ

しげが私を少しからかうようになったし
私もそれに対して怒るという一連の流れはほぼ元どおり




でも変わったことももちろんある




「あぁー無理まだ暑いわ」


しげが折角アイロンしたシャツの腕をグシャグシャっと捲るから



「あーちょっと！」


それを制してまたシャツを伸ばしてから
丁寧に折りながら捲って行くと



「必死やん、オカンか笑」


そう言いつつ両手が塞がっている私の
汗でおでこに張り付いた前髪を人差し指でそっと直す

前はどちらも世話焼きの神ちゃんの役目だった



「はいっ袖完璧」

「フフッ、ありがと」



お礼を言いながら私に向けられる目は


十数年間の幼馴染生活で
私には1度も向けられることはなく隣でしか見られなかった

好きなあの子に向けるあの目で


その幸せさに思わず私も頬が緩む



そんな私達を神ちゃんは複雑な表情で眺めていた




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