私があなたの彼女です [赤緑]

これでいい ページ16

「そろそろ行こか、お日さん沈んでまう」

「そうだね」



ようやくバス停から歩き始めると

ふいに片手を取られぎゅっと握られる



びっくりして少し上にあるしげの顔の方を向くと
しげもこっちを見下ろした




「こんな感じでええの？手ぇ繋ぐ時って」



「あ、あぁ…こんな感じ、じゃないかな…

い、いいよ、無理しないで」




「おおん？何か…今やな、って思った笑


Aちゃん、優しいから言い出されへん気ぃしたし」





自分の頬がぽっ、と染まるのが分かった


脈がどくどくと音を立て
舞い上がりそうにふわふわする





果たして、私は本当に優しいんだろうか。





そう悩むことになるのは、もう少し後の話だった








「おっおかえりしげ！Aもおかえり！」


家の前に着くとちょうど神ちゃんが
郵便を取りに外に出て来ていた




「久しぶりやなぁ神ちゃん！」

「ただいま、神ちゃん」



「おかえり。最近病院行けへんくてごめんなぁ？
色々準備とかあって無理やってん…」



「あぁーええよええよ気にせんで！
Aちゃん、毎日のように来てくれてたし」




Aちゃん、としげが発した瞬間
私の方を見る神ちゃん


そっか、神ちゃんはまだ
私たちの呼び方が変わったこと、知らなかったんだっけ。




そのまま視線がゆっくりと下りて

私としげの手元へ



聞こえないくらいの音量で
神ちゃんが小さく息を呑んだ気がする




「…そか。何の話したかまた今度教えて？」



でも、その後ニコッと笑う
神ちゃんはいつも通りだったから

私の気のせいだったかもしれない。






神ちゃんが家に帰り

私たちもそろそろ、とお互いの手を離す





「じゃあまた、Aちゃん」


「またね、大毅くん」




別れて家に帰り
そのまま自分の部屋に直行してベッドに飛び込んだ




しげが病院にいる間に
新聞の隅の方にこの事件が載った



でも、地方新聞の本当に隅の方だし匿名だったから

おそらく誰の目にも付いていない




この後高校に戻らなきゃいけないなら
もっと大変だっただろうけど

大学という、誰も私たちのことを知らない新しい環境で



しげは、私は

新しい生活をスタート出来るんだ






私はこれでいい、いや








これが、よかったのかもしれない。







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