カフェホリック男子 [桃]

喫茶れいんぼう ページ5

「気ぃつけやー寄り道なしやでー！」


終礼が終わり桐山先生がそんなことを言う中
私は若干後ろめたい気持ちで荷物をまとめると

後ろからぶつかってくるしげ



「おい」

「あー…ごめん今日無理。先帰って？」


「お前部活もうないし委員会もやってへんやろ」

「ちょっと、用事…」


「あああああおん前もしかして！」

「黙って！」


「あんな言うたのにまだコソコソ」

「あーーーー！まだ先生いる！」




「ん？呼んだ？」

「呼んでません！どうぞ学級日誌にご集中ください！」



「んー怪しいぞー？笑」


しげのせいで桐山先生に疑われ
くりくりの目でじーっと見つめられる

冷や汗が垂れそうになったその時



「照史ー！」


タイミング良く隣のクラスから来たのは…



「濱ちゃん先生！」

「よぉAちゃん！あ、さっき俺の授業寝てたやろー？笑」




「んで崇裕は俺に何の用事なん笑」

「あっそそ、今日の職員会議の資料知らん？」


「知るか！ってか今日会議ないわ笑」

「うせやん！」



大学時代からの仲良しらしい2人を置いて
おい！と叫ぶしげを無視し

私は全速力で走った






生徒はあまり来ない路地に佇む
1軒のこぢんまりとした喫茶店

『喫茶れいんぼう』


周りを警戒しつつ店へ入ると
カウンターを拭いていた彼が振り返り微笑んだ



白シャツに黒ベストとズボンと蝶ネクタイを
上品に着こなすこの人は

オーナー、中間淳太さん。



「いらっしゃ…何やAちゃんか笑」

「遅れてすいません！」


「ええよ、とりあえず着替え？」

「はい！」




大急ぎで奥で白シャツ黒エプロンに着替え
『A』のピンを胸元に

私もカウンターの中へ入りコソコソ話す



「本当すいません…」

「大丈夫やで、学生は大変やもんな。どした？」


「バカな同級生が私がここで働いていることを
先生にバラしそうになって…」

「うわ、災難やったな笑」



私の学校は特別な家庭環境じゃない限り

バイトは許されていない


しげには始めて1ヶ月でバレたけど
絶対言うな、と口封じし続けている



何でそこまでして働いてるか？

それはまた今度。



「本当どうにかして欲しいですよ
いつまで経っても5歳なんで」

「1回来たあのうるさいのやろ？」


「あの時は大変失礼しました…」

「ふはっええよ気にせんで笑
あ、それより今来たお客さん頼むわ」



チリーンと鳴ったドアに近づいて行く


「いらっしゃいませ、何名さ…」




嘘。



何で？




何でよりにもよって



「1名で」






小瀧望がここに？




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