恋愛成就エージェンシー [緑]

"でも" ページ30

お皿を洗い終わった神山さん

今日はラッキーなことに洗濯物がまだ残っていて
リビングに来た



「わ、私も手伝います！」

「結構です、(名字)さんやることあるでしょうし」


「ないです超暇です！」

「じゃあお願いします」



お互い無言で洗濯物を畳み始める



「…こない下手な人初めて見ました」

「ちょ、人が頑張ってるのに！」


「努力と結果は基本比例しません」

「また深い…」



「角をしっかり合わせてください、で…」


教えてもらいようやく何とか形になり始めた


今だ。




「…かみ、ちゃん？」



ビクッと跳ねる神山さん


「…やめてください」



「でもほら、神山さんって何か…ねえ？」

「この何週間かずっとそう呼んでいただいてますが」


「でも逆にもう何週間か経ったんですよ？
ミミたち見てて、私たち他人行儀すぎるなぁって」

「濱田は濱田、僕は僕です。支障はないかと」



「あ、じゃあAって呼んでください！」

「結構です」


「じゃあタメにしましょ？」

「僕らは友達ではありません」


「じゃあお友達なりましょうよ！私もっと」

「僕らは所詮エージェントと顧客の関係です。恋愛に集中してください」



「でも私はもっと仲良くなりたい！もっと神山さんのこと、知りたいんです」



ちょうど全て畳み終わった神山さん

視線は洗濯物に向けたまま



「…何でそれにそこまでこだわるんですか」



「神山さんだって過ごしにくくないですか？」

「勝手に決めんといてください」


「でも無理に感情押し殺してたら」

「押し殺してません」



「嘘つき」


神山さんはようやく私の方を見た

いつもの絶対零度の目ではなく
嫌悪感と苛立ちが滲み出し、でも少し動揺しているような目



「…濱田ですよね」

「はい？」


「濱田に入れ知恵されたんちゃいますか」

「…されてないとは言い切れないですけど！
でも私は純粋に神山さんのことが知りたいって前から…！」



「んで僕は、知る必要はないと何度も」

「でも」





「もうええ加減にしろや！」


急に立ち上がり大声を出す神山さん



「言うてるやろ、俺らは他人やねん勘違いすんなや！
そっちは恋愛成就したらええ、俺は仕事出来ればええ。

んな深入りせんでも十分成り立つやろ！」


「でも…」




「何やねんさっきから"でも"ばっかうっさいねん！
ほっとけやどうせただのビジネスパートナーなんやから！」


一気にまくし立て息を荒げる神山さん



普段の振る舞いからは想像出来ない姿にショックを受け
思わず涙が出てしまった

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