ベッドタイムストーリー [JW] 短編集

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「あっ！ちょ、やっぱ下手」

「わざとですー」



踊っているうちにもうすっかり前の間柄

けど曲に終わりが近づくと
この時間にも終わりが見えてくる



見上げると望も私のことを見ていて
お互い同じことを願っていることが分かる



曲は終わってしまった



手を離すけどお互いの距離はまだ近いまま

望が私の髪をツーッとなぞる



「…ワンピース着たよ。どう？」

「似合うてる。昔から似合うもんな、淡いピンク」


「ネックレスだって、望があの時くれたやつ」

「俺だらけやな？笑」





「だって…好き、だもん。ずっと」




恥ずかしくて一生言えないと思っていた言葉が零れた





「あんな知らない人の所に行きたくない

望とずっと一緒にいたいのに、なのに…」



昔から泣き虫の私

我慢しきれず涙が1粒溢れると
その後はいとも簡単にぼろぼろと頬を伝う


望は困ったような顔をして私の頬を指で拭った



「…ごめん、今日泣いてばっか。
あーあ、せっかく綺麗にしたのにボロボロだよ笑」


ふふ、と笑うと望は首を横に振る




「俺にとってはAはいつでも完璧やで。
今のA、あのドレス着とるAの何倍も綺麗。

…俺には勿体無い。釣り合わへんよ」




「望…」





「…何で、一緒になられへんねやろな。俺ら」






私たちのことなんか気にしない、という風に晴れ渡る星空




「A」

「言わないで…ごめん。私が言っておいて何だけど
望からその2文字聞いちゃったら…だめな気がする」


「…そか。じゃあ」






愛してる。





そう呟いた望は私の声を飲み込むかのように唇を塞いだ






でも私の心の叫びまではかき消せない




神様、あなたはなんてひどい人なんでしょう


せっかく、ようやく掴んだ

愛を、幸せを


またみすみすと取り上げるなんて

私は一体何をしたのでしょうか。





幸せなのに、悲しい。






「…ごめんな。


Aの気持ち、受け取ったままではおられへんかった」





これで私も望も同等だ



お互いを愛の言葉で傷つけ合って

お互い愛の言葉でその傷を舐め合って。




別れる準備が出来てしまった





「…おやすみ、望」



「…おやすみ、A」





“おやすみ”という4文字に一生分の想いを込める



ごめんね、ありがとう、さようなら、私も愛してるよ。






望の瞳は星の光を受けてキラッと輝いた


その輝きは頬を流れ星のように滑り落ちる





前を歩く望の背中は大きいのに小さくて

1度だけ鼻をすする音が聞こえた





-第7夜 fin-

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