ベッドタイムストーリー [JW] 短編集

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あたふたと必死で謝ろうとする望を遮り
何で泣いてるのか不思議に思いつつも止められなくて。

そんな私に皺だらけのタオル地のハンカチをくれて
よく分からないまま背中をさすってくれた望



その時私は思った


この人とずっと一緒にいたい、って。






望は私がお嬢様を放棄することを認めてくれたけど
他の人はそうも行かない


小4に始まった週1回のダンスレッスンでは

“大きいお家”の子同士と、”小さいお家”の子同士が
組まないといけなかったけど



もちろん私は必ず最後に1人で余った



だだっ広いフロアの真ん中で
みんなにクスクスされながらひとりになるのは

この上なく屈辱的で、寂しくて。




でもそんな時必ず


『A。いっしょに踊ろ？』



望が手を差し伸べてくれた



『…いいの？』


その頃から男前だった望は女子に人気で
色んな子に誘われてたのに毎回私と踊ってくれて。



『大きいお家の子がゆーせん、ですよね？』


先生も望の言葉に何も言えず渋々毎回許してくれた




おまけに私は当時ダンスが下手くそで何回も足を踏んづけた


『ごめん！』

『大丈夫』



それでも嫌な顔1つせず付き合ってくれて
休み時間に誰もいない音楽室で特別練習まで。


ある日そこで流れていたその曲

2人ともすぐ気に入り、お互い手を取り音楽に乗せ踊った




踊っている時リードしてくれる望は頼もしくて
ステップに集中する私に


『そうそう』

『ええよ、前より上手なってる』


優しく声をかけてくれて



いつまでもいつまでもこの時間が続けばいいのに、と子供ながら思った





そして迎えた卒業式


中学からはお嬢様、お坊っちゃま、メイド、執事は

それぞれ別の学校に通う



つまり今日が望といられる最終日



『あっという間だったね、6年』

『な』


『…ごめんね』

『ん？』


『私がお嬢様だからって付き合わせて』



『んな理由でAと一緒におらへんよ』


『へ？』




『俺はちゃんとAといたくておった。

ほんまは…これから先も、ずっと一緒にいたい。


俺、絶対一流の執事になってAん家行くからそれまで待っとって？』




『そしたら、ずっと一緒にいられる？』





『おん。約束』


誓いとして渡された金色のネックレス



2人で交えた小指と、心地いいお互いの温もり



この人に一生ついていく

この人に一生守ってもらうんだ。



望の腕の中で、そう信じてた







「昔より上手なってる」

「馬鹿にしてる？」



「はて何のことやら」


すっとぼける望の足をわざと踏む

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