ベッドタイムストーリー [JW] 短編集

Purple Night ページ16

ブーン ブーン ブーン


机の上で震える俺のスマホ



画面が明るくなり映し出された名前が
あの子やと分かるとすぐに電話を取った




「もしもしA？」

「濱ちゃん… 」



「今どこにおるん」

「…私の家、だけど」




「ん。すぐ行く」




部屋着から引き出しの1番上にあった洋服に着替えて
シャワーで濡れた髪を何となく直し

家の鍵、バイクの鍵、財布、そしてスマホだけ
ポケットに突っ込んで家を飛び出した






外はもう真っ暗

星は見えない曇り空の下


生ぬるい強風を身体全体で受け止め全速力でバイクを飛ばす




Aの家までの10分間たまに思うことがある



俺、何やってんねやろって。




どんなに疲れとって風呂も入ってパジャマになって
もう寝ようとしとった時でも

Aからの電話が1本入ればすぐに走り出す





一途ではあるんやろけどな？


絶対叶わない恋なのにずっと想い続けとるなんて。







家の前でバイクを乗り捨てAの部屋の階へ

1分でも1秒でも早く着くように足を運ぶ




『(名字)』と丁寧な、でもどこか可愛らしい字で書かれた表札


ノックして取っ手に手をかけるとドアは簡単に開いた




「お邪魔しまーす…A？」



真っ暗な部屋の中をゆっくりと進むと


いつもの場所
ベッドの上で体育座りしとる彼女がおった




「…A？」




ふっと俺の方を向いて微笑む彼女の頬はすでに濡れとる




「…来てくれたんだ、濱ちゃん」





「また玄関のドア開いとったで？危ないやろ」

「濱ちゃんがいるから大丈夫」


「大丈夫ちゃう、俺来れへんかったらどないするつもりやったん」

「んー…でも何か今日も来てくれる気がした」




俺のことをまっすぐな目で見てそんなことを言うから

俺はもっともっと好きになってまうんやで？




ま、Aはそんなこと1ミリも思ってへんねやろけど。






「今日はどないしたん？…彼氏と」

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