ベッドタイムストーリー [JW] 短編集

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「どうって何や笑」

「例えば、亭主関白なのかなぁーとか」



「それ聞いて何になんねん笑」

「いや、何となく、えと…面白いじゃないですか！
普段はお仕事中の照史先輩しか見ないので！」




「んー…まぁ優しいかもな。いっつも俺が帰って来るまで起きとるし
風呂は追い炊きしてホカホカやし飯も温かいし
シャツもいつの間にかアイロンされて糊付けされとるし…」


「すごい、直す所なしじゃないですか！」





「せやなぁー。ま、完璧…かもな」





完璧。


超えられない壁。



また自分で自分の心の傷をえぐったのを
消毒でもするつもりで気の抜け始めた生ぬるいビールを煽った




ジョッキを置き顔を上げると

お皿の上で焼き鳥の串をつまんでくるくるいじりながら
どこでもない1点を見つめる先輩




「完璧、か…」





「…照史先輩？」






「ん！？あっごめんめっちゃぼーっとしとった笑
って俺の話はもうええやろ！Aちゃんこそさ、最近悩みとかないん？」



「悩み…」





私、自分の心の傷をえぐるのをやめたいんです。

自分でえぐっておいてどうしようもなく悲しい気持ちになるのをやめたいんです。


照史先輩への”好き”の気持ち、忘れたいんです。




どうやったら私も完璧になれますか？

どうやったら時間は戻せますか？


どうやったら照史先輩は振り向いてくれますか？





どうやったら…私と照史先輩は結ばれたんでしょうか。





「…いえ！特にないです」

「ほんまに？」



「はい！もう悩みなんてここ最近ずっとないですよー
毎日能天気に元気にお仕事させてもらってます！」



「そか…何か悩みあったらすぐ言うてな？俺でよかったらいつでも相談乗るし」

「はい、ありがとうございます」




「ここだけの話な？」


小さく手招きされて顔を近づけると照史先輩も少し近づいて来て
低い小声で呟いた




「…ここだけの話

俺にとってAちゃんって1番特別な後輩やから。


みんなには内緒やで？」




悪戯っぽく笑って人差し指を立てしーっとポーズする先輩





赤提灯のようにゆらゆら揺らめく私の恋心は

どんどん燃え上がるばかりだ。






私も真似して立てた人差し指を自分の唇に当て


先輩への溢れそうな気持ちを全部塞いだ

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