なないろメロディー [JW] 短編集

Blue Melody ページ15

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街中を見渡せば幸せそうに寄り添う
恋という甘い熱に侵される人々。





クリスマスが終わり、年も開けて仕舞えばお互いで過ごす次の大きなイベントはバレンタインデーなのだろう。




視線の先、これでもかと並び列をなす甘くて濃厚なチョコレート。




意識が戻ったのは「すいません」と声を掛けられたからで「いらっしゃいませ」と口にしたのは他でもない自分自身。




迷うようにお互いに顔を見ては頰を赤らめる2人に流れたのは溶けたそれによく似たどろどろとした感情。


無視するようにとってつけた笑顔貼り付け今日も一仕事。




「プレゼントですか？」




漂う幸せと初々しさに付き合いたてを想像し、これからさぞかし甘い夜を過ごすんだろうな。なんてそんなことを頭に掛けた言葉は



「婚約指輪が欲しいんです」


幸せの塊で返され、ぽたぽたと雫になる苦い苦い何か。



「あの」



一瞬表情が強張ってしまったのをきっと感じてしまったのだろう。


戸惑う表情にすぐ笑いかけ



「それはそれはご婚約おめでとうございます。

では早速ですが、どのようなものがよろしいですか？」





気持ちのこもらない祝いの意を並べる。




ごめんなさい、貴方たちが悪いわけじゃないの。そんな言い訳をとってつけ




「それなら、こちらはどうですか？」




紹介したものは自分が貰ったらきっと喜ぶもの。






それに心底嬉しそうに笑って即決してくれた2人を横目になんで私はこの仕事を選んだのだと自分を恨んだ。



人の幸せを1番に願わなければいけない立場なのに、今はきらきらと光るリング状のものは自分を苦しめるだけで深いため息。







貴方のせいよ、ねえ。







ここにいない誰かを想って苦笑いを浮かべた。









今日も頭を下げ、出たお店。

外に一歩足を踏み入れた瞬間空に広がる一目の黒に吐く息の白。



さっきまでの煌びやかな空間が嘘みたいで
ポケットから出した携帯は灯りと共に通知を知らせ


【店の外】とたった3文字だけど理解するには充分過ぎた。









トンっと背中に感じる重みと温かさ。



「遅いって」



低くて甘い声は今一番会いたいようで会いたくない人。

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