One step Two step (ページ39)

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Story.39 ページ39

「ありがとう、本当に嬉しい…」

何となく、

ジスの目から涙が出るって非現実的と言うか。

今きっとジスのこんな泣き顔を
見れるのも私の特権だな、なんて不謹慎だけど。

「でも…仕事は…？」

そう、仕事のこと。

『仕事は辞めるつもりでいる。転勤先でまた仕事探せば良いかなって。』

ジスと居ることと今の仕事のことは
今や天秤にかけることではない。

ジスと出会う前の私は
それこそ仕事第一、みたいな所があったけど。

「僕を…信じてくれてありがとう。」

『当たり前でしょ。私にはジスが居るから何も怖くない。』

この先何があるかはわからない。

ジスと居る今がとても幸せだけど

ジスに他に好きな人が出来るかもしれない。

または私にも何が起きるかはわからない。

誰にも何もわからないけど、
ジスがそばに居る、それだけを信じていたい。

その日はとびっきり強く
抱き締められながら眠りに落ちた。

次の日私はソクミンに

『ジスと一緒に行くことにしたの。』

と話した。

ソクミンは豆鉄砲をくらった鳩
みたいな顔をしていたけれど。

「Aのことだからそう言うと思ったよ。」

ホッとしたように
ニコニコしながらそう言うんだから

やっぱりこの人は良くわかってるなって思った。

1年目からおとなりさんとして
苦楽を共にしてきた。

そんなソクミンと離れるのは
ちょっと寂しいな、なんて思ったり。

ソクミンが居てくれたから
ジスとも出会えたのだと思うと…

今このソクミンの顔を
見ているだけでなんだか涙が出てくる。

「転勤先に行ったって二度と会えないわけじゃないんだから(笑)」

ソクミンにこの上ない
幸せが訪れるように願った。