One step Two step (ページ37)

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Story.37 ページ37

「えっ？もしかして何も聞いてないの？」

「ジス、転勤になったんだよ」

時が止まったみたいだった

私は何も聞いてない

ジスはそんなこと言ってなかったのに

どうしてソクミンが知ってて
私は何も知らないの？

『何も…聞いてない…』

「あ〜…Aにいつ言おうかなって悩んでたからちゃんと言いなよって言ったのに…」

「なんかごめん…」

『ううん、ソクミンは何も悪くない。』

どうして言ってくれなかったの…？

そうやって話していたら
ジスがデスクに戻ってきたけれど
何も話す気になれなかった。

私に話しかけようとしたジスにソクミンが

"「今はやめておいた方が良いよ」"

って言ったのだけ聞こえた。

だけど帰る家は同じ。

いつもなら終業のチャイムが鳴って、
買い物がある日は2人でスーパーに寄って。

でも今日は何をするにも気まずさしか感じない。

さっきのソクミンの話があったからか
ジスが気を遣いながら

「A、帰ろう？」

そんな時まで優しい声を出すけど

私に言ってないことがあるのに。

ただ頷くしか出来なくて
とりあえず2人並んで歩くけど

まるで2人は一緒に居ないみたいだった。

「ねえA…どうしたの…」

自覚が無いのか、そうかそうか、と
どんどん自分の気持ちは塞がっていく。

『私に言ってないことがあるのにどうしたのかって？自分の胸に聞いてみたら？』

寂しかったんだ私は。

何も話してくれなかったことが。

終いにはどうしたのなんて。

ジスに冷たく言い放って
そのまま足早に歩き始めてしまったからには
ジスも足早には追いかけてはこない。

家に帰ったら落ち着いて話し合いたい
そういうタイプなんだってことも知ってる。

でも私の気持ちは塞がり、
ぽっかりと穴が開いてしまった。