Story.28 ページ28
結局本当にそのまま誕生日当日を迎えた。
ジスって彼女の誕生日は祝わないタイプか、
そうかそうか、と言い聞かせて何事も無く出勤。
…のはずだった。
会社に着いてデスクに向かえば
デスクいっぱいの大きな花束。
花束にはカードが挿されていて
"「今夜19時にお迎えに参ります お姫様」"
と書かれていた。
ここまで来てジスじゃなかったら
本当にどんなリアクションしたら
良いのかわからないけど。
ちゃんと最後に"「ジスより」"
って書いてあった。
当のジスはと言うと隣の席には居ない。
それからジスは始業時間ちょっと前に
しれっと来ては「おはよう」以外
何も言ってこない。
これは19時まで何も知らされないスタイル？
お手洗いから戻ると
今度はデスクの上に箱が置かれていた。
パカッと開けると
中には真っ赤なドレスが入っていた。
驚いて横に居るジスをパッと見ても
ジスは何も言ってこない。
にやつく口元を隠して必死にこっちを
見ないようにしてることだけはわかった。
"「これに着替えてから来てください」"
また挿されているカードを見ると
そう書かれていた。
どこで着替えるんだよ、ここ会社だぞ…
とは思ったけど…。
それから席を立つたびに
デスクには色々なものが置かれていた。
アクセサリーやかばんまで用意されていて。
終業後せっせと着替えて、
カードに書かれていた会社近くの噴水広場へ向かう。
そこには車と、タキシードを着たジスが居た。
後ろ姿からもわかる、スタイルの良さ。
それから緊張感。
私の気配に気付いたのか
くるっと振り返って一言。
「とても綺麗だね、僕だけのお姫様。」
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作者名：mi | 作成日時：2019年10月23日 20時
