ANGEL・KISS / Hokuto.M 【3】

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文字通り仕事に明け暮れた12月が無事終わり、年が明けた。



1月は閑散期で仕事も比較的緩やか。
残業もほぼなく、定時で帰社出来る日が続いていた。


そんな水曜日。



真っ直ぐ家に帰るのもそろそろ味気なく感じていた。
たまには寄り道･･･そうだ、映画でも見に行くかと思い立つ。





『お先に失礼します、お疲れ様でした』




「お疲れ」


「お疲れさま、気をつけてね！」






藤ヶ谷さんもAさんも間も無く帰社出来るようだったから、お言葉に甘えて一足先に帰社させていただく。




行き先は2つ先の駅に隣接する商業施設の中にある映画館にしよう。そこなら映画の前に読みたかった本も買えるし時間があるなら洋服も見れるし。


これからのスケジュールの枠組みを組み立てながら電車に乗り込んだ。スマホで大体の上映時間を検索。次は19時過ぎからの作品が多いようだった。






書店で好きな作家の新刊を買って、ぶらりウインドウショッピングをしていると、もうこんな時間だ。


どの映画を観るかもまだ決めていないしそろそろ向かうか。エスカレーターに乗り、映画館のフロアへと足を運ぶ。



平日の夜に初めて来たけれど、人混みが苦手な俺にはちょうどいい人の多さだった。仕事終わりに映画を見に来るのもいいかもしれない、と思っていたら。








チケット売り場からこちらへ歩いて来る1人の女性。
思わず声をかけていた。







『え？A･･･さん！？』





「あれ、松村くん！お疲れさま、松村くんも1人で映画観に？」





『あ、はい！たまにはいいかなって』





「ふふ、私も！今日レディースデーだし」








Aさんの手には購入済みのチケット。

･･･一か八か。







『あの！』





「？」





『もしよかったら･･･一緒に観てもいい、ですか？や！お邪魔だったら全然！断っていただいて大丈夫、なんですけど･･･』





「ふふ、いいよ？私が選んだのでいいなら」






いや、Aさんと一緒なら何でもいいんです！
という言葉は危うく出そうになったけど飲み込んだ。



俺のしどろもどろになりながらの申し出に、笑って応えてくれるAさんはいつもの仕事の時じゃない、オフのAさんのような気がした。







Aさん。
･･･ジェシーの言う通り、貴方に少し近付けたと。
そう思ってもいいですか？

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