5 ページ19
Side_JH
「ごめん、何でもいいから靴買ってきてくれない？」
それは俺が初めて仕事をする日のことだった。夜のことを考えなくともいいように、街をぶらついていたらマークからそんな電話が入った。靴を駄目にするような遊び方をしたのならどんな遊び方をしたんだとちょっと呆れつつ、何でもいいと言っていたから好きな色である青のものを選び家に帰ると、マークと同い年くらいの女の子が、マークとテヨンイヒョンと一緒にお昼を食べていた。
『……こんにちは、Aです』
「こんにちは」
『マーク、この人も？』
「うん。俺のヒョンだよ。ヒョン、靴は？」
買ってきた靴を差し出すと、Aにはちょっと大きいんじゃないかな、とマークが眉を寄せる。その子にあげるんならそう言ってもらわないと困るんだけど。俺はマークが履くものだと思っていたから、デザインも色も男の子みたいなものを選んできてしまったし。それでもその子ーーーAは、嬉しそうに『可愛い色だね』と、大切そうに手にしていた。
夕方にあの子を送ると言い家を出て行ったマークは、まだここにいて欲しそうだった。よく笑って愛嬌のある子だったから、マークが気に入るのも分かる。それに誰も触れなかったけれど、首や腕には痣があったから、家に帰したらどんな目に遭うのか大体想像がつくから余計に帰したくなかったんだろう。
「……マークはきっとあの子を連れて帰ってくるよ」
「それはヒョンお得意の勘？」
「うん。なんかそんな感じがするんだ」
それから30分程経ってから、マークは痛々しい姿をしたAの手を引いて帰って来た。その胸にはしっかりと俺が買ってきた靴を抱えていて『ジェヒョンさん、靴、ごめんなさい』と泣きそうな顔で頭を下げた。その瞬間、俺は何がなんでもこの子を守るために生きなければならないと、そう感じたのだ。
俺がこの家に来た理由がAと同じだったから、というのもあるのかもしれない。俺は、暴力を振ってくる親から逃げているところを今の父さんに、組長に拾われたのだ。俺たち兄弟は皆それぞれの理由があって、この家に住んでいる。そうでなければ好き好んで若い歳からこんなことをしないだろう。
『ジェヒョンくん英語教えて！』「マークじゃなくていいの？」『マークは厳しいから嫌だ』「それマークに言っていい？」そんな平穏な日が続くと思っていたのに。Aにはどうか、綺麗な世界だけを見ていて欲しかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 951人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
cafe(プロフ) - ハラハラしつつも、日常の中に見えるクスッと感がたまらなく好きです！（個人的にドヨンの溢れ出る主人公への愛とジェヒョンの静かなシスコンの対比が大好物です笑）。筆者様のペースでこれからも更新頑張ってください！続きも楽しみにしています。 (5月4日 18時) (
レス) @page30 id: 509f3fa889 (このIDを非表示/違反報告)
ヒナ(プロフ) - 面白すぎる！素敵な作品です(*'▽'*) (5月1日 21時) (レス) id: 272efde30c (このIDを非表示/違反報告)
cooky(プロフ) - 続き楽しみにしております！ (4月28日 22時) (レス) @page28 id: 55ebdcbd41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぴおん | 作成日時：2024年3月19日 8時
