※番外編 ページ38
『え……?』
聞きなれた声。
見慣れた褐色の肌。
暗闇でも鮮明に見える明るい髪色。
「なっ、なんだお前!!?」
「“なんだ”とはこっちのセリフですね。あなたこそ、僕の彼女に何の用です?」
グイッと腰を引き寄せられて抱きしめられる。
細く見えるにがっしりとした身体つき。
ふわりと香る柔軟剤のような香り。
抱きしめられて感じる、温かいぬくもり。
私達付き合ってないんだから、勝手に彼女なんて言わないでよ。
そう言おうと思ったのに、その言葉は喉につっかえたように出てこなかった。
いつもニコニコと胡散臭い笑顔振りまいてるくせに。
いつも女子高生にデレデレしてるロリコンゴリラのくせに。
いつもムカつくことばかり言うくせに。
こう言う時だけカッコいいヒーローになるのはずるいわよ。
「俺はただ、雨の中を傘もささずに走っているAさんに傘を貸そうかと…」
「苦しい言い訳ですね。傘も持たずレインコートを着ているあなたが、僕の彼女にどうやって傘を貸すと言うんです?」
「そ、それは……」
グッと押し黙り、その場に立ち尽くす男。
その姿を背に、安心して完全に力が抜けてしまった私を支えながら歩き出す安室さん。
正直、もうどうなってもいいなんて投げやりになっていたけど、やっぱり怖くて。
もう私はダメなんじゃないかって。
このまま終わっちゃうんじゃないかと、とても怖くて不安だった。
だから、本当に、
__安室さんが来てくれて、良かった。
そう思った時、視界の隅で電灯に照らされてギラリと光るものが見えた。
『ひっ…!!あむろさ…後ろっ!!』
ナイフをこちらに向けふりかざす男。
やっぱりダメだったじゃないかと、安室さんまで巻き込んでどうするんだと後悔して、ぎゅっと目を閉じた。
ドゴォッ!!
『へ………』
思わぬ効果音に自分でも間抜けだと思った声が出る。
安室さんの蹴りが男の顔に命中して、吹っ飛ぶ男。
安室さんは、その光景にぽかんと口を開けて、へなりと座り込んでしまった私を立たせて、腰を再び抱き寄せ一言。
「次、Aに手を出そうとしたら、その脳天ぶち抜くぞ」
未だかつて聞いたことないようなドスのきいた声で言い放つ安室さん。
吹っ飛んだ男は意識があるのかないのかわからないが、本能的に危険を察知したのか、体をびくりと震わせていた。
……私が言うことじゃないかもしれないけど、ご愁傷様です。
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はりねずみ。(プロフ) - 由羅さん» 神だなんてもったいないお言葉です……!ありがとうございます! (2020年3月15日 17時) (レス) id: f57cf1299c (このIDを非表示/違反報告)
由羅(プロフ) - 神、神ですね……神としかいいようがないです (2020年3月10日 14時) (レス) id: a829207c12 (このIDを非表示/違反報告)
はりねずみ。(プロフ) - 笑々さん» ありがとうございます!!笑っていただけて嬉しいです!私自身、そんな感じの会話が大好きなので、安室さんたちにもやってもらいました笑 ありがとうございます! (2019年10月10日 23時) (レス) id: 2649fb9203 (このIDを非表示/違反報告)
笑々(プロフ) - 名前を呼ばせるところで、早すぎだろなんか腹立つな は声をあげて笑いました笑 ありがとうございます笑 (2019年9月23日 10時) (レス) id: f052978bd7 (このIDを非表示/違反報告)
はりねずみ。(プロフ) - ここねさん» きゃー!ありがとうございます!!とても!すごく!本当に嬉しいです!!続編でも面白さとキュンキュンを追求してお話を進めれるように頑張りますね!これからもよろしくお願いします! (2019年5月12日 17時) (レス) id: 2649fb9203 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はりねずみ。 | 作成日時:2018年12月12日 7時