安室透の前で盛大にこけるところから始まる話

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『なっ！？安室さん、いきなりどうし「透」え？』
「透って呼んで。沖矢のことは名前で呼ぶくせに、どうして俺は苗字なんだよ。おかしいだろ」
『…昴さんとは結構長いつきあいだから、名前で呼ぶのは必然的みたいなものなんだけど』
「うるさい」
『痛い痛い痛い。呼ぶから呼ぶから呼びますから。腕の力を弱めて。圧迫死する！！』

ぐぐぐぐ。と音がするほどに抱きしめられた腕の力がふっと緩む。
…本気で死ぬかと思った。
この人、本当に人間かしら。
実は人間のふりをしたイケメンゴリラじゃないの？

「誰がゴリラだ」
『やば。口が勝手に…』
「………」

再びギロリと睨んでくる安室さん。
これはやばいわね。
本気でゴリラ(安室さん)に殺されるわよ。

「で？」
『え？何ですか？』
「とぼけるな」
『まだ覚えていたか…』
「俺がそんなにすぐに忘れるとでも？」

今度は必殺あむぴスマイルを発動させた安室さん。
その笑顔の裏には何があるのか怖いわね。

『……と』
「………」
『…透さん』
「さん要らない」
『呼び捨てで呼べと？無理ですよ。昴さんだってさんが付いてるじゃないですか』
「俺があいつと同等だと？意味がわからんこと言うな」
『いや、こっちが意味わからんから。昴さんとどんな関係だよ』

本当に昴さんとどんな関係なのよ。
あんなにハモるくらいに仲良かったのに、何でそんなに嫌ってるのよ。

「ほら、早く」
『…………』
「A」
『…………』
「言わないとキスするぞ」
『透』
「早すぎだろ。なんか腹立つな。もう一回」
『やだ』
「もう一回」
『無理』
「……A頼む。君だから、俺の名前を呼んでほしいんだ」
『っ……』

頰に手を添えられ、目線を合わせられる。
何よ。その声、その表情。
つくづくずるいわねこのイケメン。

『………とおる』
「…………」
『…何よ、そのポカンとした顔は。呼べって言ったのは透の方でしょ』
「……やっぱりキスしたい」
『は！？何言ってるの本気？』
「俺はいつだって本気だよ」
『っ…』

ふわりと笑う目の前のイケメン。
やめて。ダメよ。そんな顔してもダメ。
一回でもキスしたら、もう今の関係に戻れなくなっちゃう気がするの。
あなたとはつきあうことはできないのに。

『…ダメです。私たちつきあってないんだし。そういうのは恋人をつくってしてください。あなたなら女なんていっぱい寄ってくるでしょ』
「俺は君がいいんだよ」
『……っ』

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