安室透の前で盛大にこけるところから始まる話

２４【キスとスローモション】 ページ25

『…………おーまいがー』

電話の相手が快く…ではないけれど、とりあえず了承してくれたため、目的地まで歩いてきた。
そこまではいいのよ。そこまでは。
問題は……

ど う し て 安 室 さ ん が こ こ に い る 。

目線の先には白い車。
絶対あれ、安室さんの車よね？
あの高級な車よね？
嘘でしょ。どうしてこんな豪邸の前にとまってるのよ。
早くどっか行ってよ。
あんな夢を見た後だから今は絶対会いたくないのに。

もう一度、道の角から豪邸の前をのぞいてみる。
いる！やっぱりいる！！
本当になんでそんなところにいるのよ。
ポアロはどうしたのよ。ポアロは。
今日はシフト入ってないの？
じゃあ今からでも無理やり入れてよ。
今はどうしても会いたくないのよ。
私の心臓の音がうるさすぎて会えないの。

…もしかして、この家にいる人と知り合い？
彼と今日会う予定だったとか？
いや、でも、安室さんは車の中にいたわよね？
なんで車から出てインターフォンを押さないのよ。
インターフォンを押されて家の中に入っていかれても困るけど。
このままじゃ、不審者感丸出しイケメンに成り下がるわよ。

その場ではぁ。とため息をついた。
安室さんはなかなか動かないし、これならポアロに行った方が良かったじゃない。
今からでもポアロに行こうかしら。
でも、結構無理言ってご飯食べさせてって彼にお願いしちゃったし…。

どうしようかと迷っていても、約束の時間は刻一刻と迫ってくる。
あああ。もう何もかも安室さんが悪いのよ。
八つ当たり？そんなの知らないわよ。
私はお腹が空いたのよ。
だから早くどっか行ってよお願い。
神様仏様梓様、どうか安室さんにこの場から立ち去るように言ってください。

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