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軽くノックをして病室に入ると、成人にしては小さな体がムクリと起き上がる。
「おはよう。よく眠れた？」
「おはよ、涼介…いつもと同じ。毎日寝すぎてよく分かんないよ。」
目を擦りながら答えて、早々にパジャマのボタンを開け始める知念。
そりゃそうだな…笑
安静にしてろって俺らがしつこく言ってるからね。
「お、偉いね知念。」
後ろから入ってきた圭人が声を掛けると、ふと視線を上げて途端に嬉しそうな表情を浮かべた。
「けーと！来てくれたんだ！」
「うん、さっきまで夜勤だったの。だから今日は一緒にいようね。」
そう言われた知念は一瞬、パァッと明るくなったが、すぐに心配そうな顔つきをした。
「夜勤ってことは寝てないんじゃないの？帰らなくて大丈夫？」
うん、それは俺も思っていたところ。
知念もそういうすぐに気がつく所は変わらないなぁ。
「大丈夫だよ。夜あんまり忙しくなかったから結構仮眠とれたの。だから一緒にいるね。」
なるほど、寝られたのならいいや…と思い知念を見ると、同じく納得した様子。
「いいなぁ、俺も知念と一日一緒にいたいよ」
裕翔が羨ましそうに言っているが、診療科目の違う圭人と違い、俺と同じく担当医の裕翔は毎日会っているから羨むことでは無いだろうにね。
まあ、そんなことは今はどうでもいい。
今日の俺には使命がある…！
「胸の音聴くね。」と言い、聴診しながら切り出すタイミングを図る。
聴診は毎日しているから慣れたもので、知念も落ち着いている。
その間、裕翔は点滴を変えたり、出しっぱなしのペットボトルを冷蔵庫にいれたりと身の回りを整えてくれ、圭人はベッドに腰かけ知念の背中を支えてあげている。
言うなら今だよね。
聴診器を置き、体温計を挟ませ、慎重に、でも普段通りに話しかける。
「知念、お腹の具合どう？トイレには行った？」
「ん？…トイレ行ったよ。お腹もいつもと同じ」
一瞬で察したのか警戒しながら当たり障りなく答えた知念。
“いつもと同じ”とは、便が出ていないということ。
「じゃあ、今日は楽になるお薬しよっか。このままだと苦しくなっちゃうからね」
「…まだ大丈夫だよ」
「あ、本当？ちょっとお腹触らせてね」
交わそうとする知念に負けじと、触診をさり気なく始めることにした。
ごく自然に圭人と裕翔が知念を寝かせたり服を捲ったりとサポートしてくれる。
その流れに、知念の瞳は不安そうに揺れ早くも潤み始めた。
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作者名：ばーむ | 作成日時：2019年10月19日 22時
