ねえ、先生。 (ページ32)

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そのころだっただろうか。

阿部先生が英語の先生と英語で話し出したのは。

私の学校は一応英語学習を売りにしている。

だから、アメリカからネイティブの先生が来ている。

その先生とずっと英語で話しているのだ。

それも毎日。

ちょうど英検の一次の特訓をネイティブの先生としていて、職員室に行くことが多くなった私は驚いていた。

いつも準備室にこもる阿部先生が、

職員室で仕事をしていて、かつ、英語で人と話しているのだから。

まあ、せっかくの機会だろうし、話すって大事だもんな、なんて勝手に思っていた。

まだ知らない。

阿部先生がこのことをしていたわけなんて、まだ知らない。

ネイティブの先生には一次で使うライティングの練習をしていた。

ネ「難しい言葉は使わないで、簡単な言葉で表現することを心掛けて」

彼はよく私にそう言った。

難しい単語を使って失敗するより簡単な言葉で確実に表現する方が得点に結びつくと言われている(らしい)。

阿「鈴木さんも英検受けるの？？」

「はい」

阿「もうすぐだよね？頑張って！！」

夕方5時前、阿部先生はそう言って帰っていった。