縁の庭【北信介】 (ページ11)

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いつも通りの、平和な朝。

のはずが、この日はちょっとだけ違いました

信ちゃんはいつも通りでしたが、
おばあちゃんはなぜかよそよそしいというか、
そわそわしているように見えました

「いってきます」

「行ってらっしゃい、信ちゃん」

『きゅん！』

玄関でいつものように信ちゃんを送り出すと、
おばあちゃんは台所に行き
何かを作り始めました

いつもは部屋の掃除をする時間なのに…

不思議に思った私は台所に行き、
おばあちゃんの手元を見ました

何か、生地のようなものをかき混ぜています

これは

チーズとバターの匂い…？

おばあちゃんはじっと見つめる私に気付くと
教えてくれました

「信ちゃんな、今日誕生日やねん」

『きゅぽっ』

「ふふ」

驚いて変な声が出ました
今日は7月5日。
まさか今日が信ちゃんの誕生日だったなんて

私は家族失格です…

「毎年ケーキを手作りしとるんよ。
いつも違うの作るんやで、
去年は苺のショートケーキ、
その前はフルーツタルト、
やから今年はチーズケーキにしよ思てん」

おばあちゃんは、にこにこしながら
そう言いました

その笑顔を見て、わたしは
いても立ってもいられなくなりました

わたしも、信ちゃんをお祝いしたい

何か贈らなければ…！

『きゅん！！』

「あら、狐さん出掛けるん？
行ってらっしゃい」

おばあちゃんの声に背中で返事しながら、

わたしは森へと向かいました