. ページ46
花子くんとの花札は案外白熱した試合だった。私も好きでよく花札をしていたため、ルールは知っていた。
｢よしっ！ 猪鹿蝶、赤短、藤桐シマ！ 合わせて100点！ 頂きましょうかね！｣
｢えぇ……なんでそんなに強いわけぇ……｣
花子くんはブツブツと不満を漏らしながら札を私に渡す、と思いきや嬉しそうに声を上げた。
｢待って！ よく見たら俺も月見と花見で役ついてんじゃん！｣
｢いやいや、よく見てよ。雨で流れてる｣
花子くんはハッとして、残念そうに項垂れた。
｢気付かなかった……｣
｢あははっ！ ユヅルってば相変わらずおっちょこちょいなんだか、ら……あ……違った、花子くん｣
一瞬の沈黙。
｢……ユヅルって、誰？｣
分かってた。名前を間違えられて、誰だと聞くなって言うのも無理な話だ。でも、やっぱり苦しい。
｢名前間違えられたら嫌ですよね！ごめんなさい、次は気をつけるので！｣
私は頑張って笑って言う。
｢……(ミョウジ)……言いたくないの？｣
ここで私が言いたくないと言えば、花子くんはそれ以上何も聞いてこないだろう。それでも、これくらいは花子くんに話しておくべきだと思った。
｢…………弟です。2年前に死んじゃったんですけど｣
｢そ、そうなの……俺と一緒だ｣
花子くんの言う“一緒”が何を指しているの分からなかった。弟がいることなのか、その弟はもういないということなのか。
｢ははっ、花子くんの話は重そうだから聞きなくないなぁ……｣
自分の笑い声が思っていた以上に乾いていて驚いた。なんだか今の気持ちを助長しているみたいで、笑ってはいけないような気がした。
｢……お互い様じゃん｣
｢あはは、確かに｣
それでも笑わずにはいられなかった。じゃないと泣いてしまいそうだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 100人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シズ - 見ながら爆笑してしまいました(笑) 続き楽しみです (2022年8月22日 2時) (
レス) @page46 id: 7fbee373af (このIDを非表示/違反報告)
被苦人(プロフ) - ニコさん» そう言って頂けて嬉しいです！ 分かります！ 土籠先生攻めいいですよね…ネタがあればまた書こうかなと思います！ (2020年3月3日 7時) (レス) id: 2d39e952a2 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ - 好きです！個人的には土籠先生攻めも結構好きです (2020年3月3日 2時) (レス) id: 40dba85962 (このIDを非表示/違反報告)
被苦人(プロフ) - 腐った人間さん» 自給自足の為に生み出したものなので、他の同士にも供給出来て嬉しいです！ 正直この作品はノリだけが命なので、そう言って頂けて良かったです！ 拙いですが、これからもお付き合い頂けると嬉しいです！ (2020年3月1日 16時) (レス) id: 2d39e952a2 (このIDを非表示/違反報告)
腐った人間 - あ、好きですショタの供給ありがとうごさいます最高です()ノリがよくてすごく読みやすいです！これからも頑張ってください！ (2020年3月1日 15時) (レス) id: a770919e54 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：被苦人 | 作成日時：2020年2月10日 10時
