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16. ページ18

次は二年生だ。

さっきの三年生で恐怖という感情は払拭された。

だから大丈夫なはずだ。

同い年だし。

しかも、良く見たら二年生と一年生は一緒にいるようだ。

これは一度にまとめて渡せる。


タオルとドリンクを持ち、二年生と一年生の元へ向かう。


正直、二年生の山本くんが怖い。

福永くんはあまり喋らないし。

でも一年生はすごく人当たりの良さそうな子たちだった。



ダメだ。

怖くても、喋らなくても、色んな人と友達になりたい。

よし、頑張ろう。


今日、何度目かの気合いを入れ、口を開いた。


「た、タオルとドリンクですっ、どうぞ!」


頑張ったぞ、私。


自画自賛し、相手の出方を伺う。


「ありがとうございます!!」

「あ、ああありがとう、ご、ございます」


一年生の三人は声を揃え、山本くんはキョドり、福永くんは無言で受け取った。


よかった。

悪印象は与えていないようだ。


三年生のときも、良い印象をもってもらえるように心掛けた。

次渡すときは笑顔もできるようにしておこう。


後ろを向くと、ぬっと手が伸びてきて頭を撫でられた。おそらく研磨だろう。

研磨は微笑みながら、無言で頭を撫でている。

次は黒尾先輩が私の頭に手を置いた。


「がんばったな」


「...はい!」


すごく嬉しかった。

支えてくれる人がいることが、こんなにも幸せなことなのだと、今日初めて知った。


初めての感覚だったから、少し恥ずかしくもあった。


「そ、そういえば、休憩って何分あるんですか」


その恥ずかしさから逃げるように、話題を変える。


「まあ、基本的には15分くらいだな」


「あんなに激しい練習なのに、大変ですね」


「好きだからな、バレー」


黒尾先輩は嬉しそうに答える。


何かに熱中したこともなければ、一生懸命になったこともない私には、とても羨ましかった。

それも、すべて対人恐怖症のせいだ。


二人に気付かれないように、小さくため息を吐いた。




休憩はほとんど雑談で終わってしまった。



その日は初めてのことがたくさんあって、心踊ってばかりだったが、今までの自分に対する劣等感でため息の多い1日だった。

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孤爪研磨 - うp主頑張れ… (2016年8月18日 8時) (レス) id: e6c761f5e4 (このIDを非表示/違反報告)
もふもふ(=゚ω゚)ノ - 面白いです!受験生で更新出来ないのはしょうがない事なので自分を攻めないで下さい!例え何ヵ月、何年かかってもずっと待ってますから。安心して勉強して下さい!応援してます! (2016年1月12日 16時) (レス) id: 58e18e9b88 (このIDを非表示/違反報告)
エノキ - すっっっごく面白いです!更新停止悲しいお〜…(>ο<)早く復活して頑張れ!!皆が好きじゃなくても私が大好きですよん! (2015年11月23日 20時) (レス) id: 2ee02d19c6 (このIDを非表示/違反報告)
sky(プロフ) - こんばんは。私も中学3年で、同じく受験生です。こんなことを言うのは失礼かもしれませんが、同じ受験生として、頑張って下さい! (2015年11月22日 1時) (携帯から) (レス) id: ae9fb72407 (このIDを非表示/違反報告)
祈月 - 受験頑張って下さい、私はまだ二年後なのでそういった事はまだよく分かりませんが大変だと言うことは分かります。行きたい学校に行けるといいですね、応援してます。 (2015年11月21日 16時) (レス) id: 55f1d32a01 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:被苦人 | 作成日時:2015年8月6日 1時

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