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平日の朝、いつも目覚めて一番に思うのは『仕事行くのやだ』である。しかし今日は違った。思い出してドキドキと心臓が鳴り出し、顔に熱が集まるのが分かった。
「なんであんな夢見るのぉ……」
私はひとりベッドの上、誰が見ているわけでもないが恥ずかしさのあまり顔を手で覆った。
しかし、夢はあくまで夢。きっとすぐに忘れられる。無理やりそう思い込んで、私はベッドを降りた。歯を磨いて、顔を洗って、髪を整える。
そうだ、今日は生ゴミの日だった。ゴミ箱からゴミ袋を引っこ抜いて口を結ぶ。忘れるところだった、危ない。これを逃してしまったら次の生ゴミの日は3日後だ。それまでこのゴミと過ごすなんて御免を蒙りたいところである。
家を出るときに忘れてしまわないように玄関にゴミ袋を置いて、私は出社の準備を始めた。
まずは着ていく服を決める。いつもは適当にしてしまうが、なんとなくあの人の顔が浮かんで頬が緩んだ。たまには会社にお洒落して行ってもいいかな、なんて思った。自然とお化粧もいつもより工程が多くなり、髪だって久しぶりにアイロンで巻いてみた。透明ピアスが常連となってしまっていたピアスホールに、買ったけど新品のままジュエリーボックスに仕舞われていたピアスを着ける。キラキラと光る耳元に思わずテンションが上がってしまった。
「うん、今日の私可愛い」
鏡に映るいつもより着飾った自分と目を合わせる。
別にあの人にまた会えるなんて思ってない。ましてや付き合いたいとも微塵も思ってない。ただ少しだけ、いつもと違う出来事に浮かれてしまっているだけなのだ。こんな少しの恋心でも、こんなにも気分は変わるものなんだと感心した
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作者名:被苦人 | 作成日時:2022年9月28日 1時