だるまさんは転ばない！

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｢あ、歯磨き粉忘れた｣


そう呟いたAに、これ使っての意味を込めて愛用の歯磨き粉を差し出す。


｢ありがとう。借りるね｣


俺の言った通り歯ブラシは忘れなかったものの、歯磨き粉は忘れてしまうあたりが本当にAらしい。



2人揃って朝の身支度を終え、リビングのローテーブルを囲んで一息つく。


しばらくの沈黙。Aは少しずつが目を泳がせ始め、意識していることが丸分かりだった。


｢あの、A？｣

Aはビクッと肩を跳ねた。


｢な、なに……？｣

｢昨日の話の続き、してもいい？｣

｢えっ……あ〜、うぅ……はい｣


Aの余りの慌て様に、思わず笑がこぼれてしまう。


｢Aは昨日の夜ここでした話覚えてる？｣

Aはこくん、と頷く。


｢じゃあ話が早いな、あのなA｣

｢あ、あぁあ！ だるまくんちょっと待って！｣


あとは好きだというだけ、という所だったのに。Aは慌てて俺の口元を塞いだ。


｢先に謝りたいこと、ある｣

｢謝りたいこと？｣

｢うん……その、だるまくんがネットで活動してること私に隠してるの知ってたのに、昨日あんなこと言っちゃって、ごめんなさい｣


｢知らんフリしてるつもりやったのに｣とAは俯いてしまった。


｢あぁ、そんなこと。ほんまに気にせんといて。そもそも俺がAに話してなかったんが悪いんやし｣


俺がそう言ってもAは眉尻を下げて申し訳なさそうにしていた。

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