肆拾伍 ページ2
side.佐久間
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『ここはこうした方が＿＿』
『いやいやいや、それじゃ面白くないでしょ！』
『いや、面白さ求めてないですから！』
段々ヒートアップしたそれを思い出す。
どちらもこだわりがあって、譲れなくて、といった感じだった。
ただ、その怒声は俺にひとつの過去を思い出させた。
本番中は一生懸命考えないようにしていたそれが、
1人になった途端溢れ出す。
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『なんでこんな小さいものしか作れないんだ！この駄犬め！！』
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白衣を着た男性が、怒号を飛ばして俺を鞭で打つ。
俺は泣いて謝りながら、
薬品でうまく力の入らない体で氷を生み出し続けた。
痛いことは嫌い。痛くされたくない。
唯それだけの思いで、氷を作り続けた。
どんっと誰かにぶつかって、現実に引き戻された。
顔を上げてみると＿＿＿＿＿＿
佐「っえ…？」
白衣を着て、ニタニタと笑う男。
知っている。此奴を。俺は。
どうして、どうしてどうしてどうして。
喉からは掠れた音しか出ない。恐怖で体が動かない。
男「やっと見つけたよ、大介。」
佐「ぁ…ゃ、やだ、こないで…！」
俺が一歩引くと、男が一歩進む。
これじゃ壁にぶつかってしまう。どうしよう。
＿＿＿＿＿そうだ、お守り。お守りを出さなきゃ。
ふっか、あべちゃん、ひかる、しょうた、
りょうた、こーじ、めめ、らう。
たすけて、おねがい、たすけて。
男「くくっ…仲間を巻き込むのかい？」
お守りを握ろうと鞄に突っ込んだ手が止まる。
俺が抵抗しなければ、誰も巻き込まない？
俺が着いていけば誰も傷付かない？
佐「わかった、いっしょにいく…
だからきずつけないで、おれのかぞくは、だれも…！」
男「何言ってる、君の家族は、君が＿しただろ？」
脳裏をよぎる真っ赤な世界。
みんな倒れてく。紅く染まっていく。
あれは全部全部俺のせい。
佐「ぁ…うん、そう、そうだから、おねがい。
Snow Manのみんなには、なにもしないで！！」
男「わかった、約束しよう。じゃ、こっちへおいで。」
嬉しそうな男の後を恐る恐る、でも早足でついていく。
誰にも見つからないように。
みんなに見られたら、優しいみんなはきっと心配しちゃうから。
そうだ、連絡しておかなきゃ。
“阿部ちゃん、共演者さんに誘われちゃったから
今日お夕飯そっちで食べてきちゃうね。”
“わかったけど、本当に大丈夫？
迎えに行くから帰るとき言ってね。”
心配ばかりの阿部ちゃんに苦笑しつつ
“大丈夫”とだけ返信して、先を行く男を追った。
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作者名：yoa | 作成日時：2021年9月20日 12時
