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Aside
特進クラスに行く気力もなく、
康くんに会う気にもならず、
ひとり屋上で時間をつぶす。
信長「……………A?」
A「…織田さん?」
ガチャ、とドアがひらいた音がしたかと、後ろを振り返ると、織田さんだった。
信長「…泣いて、いたのか?」
A「い、いえ……!
あ、あくびです!」
涙の跡を見られたくなく、誤魔化そうと目をこする。
信長「こするな、」
目をこする腕を、織田さんが掴んで静止させる。
A「………織田、さ、」
信長「お前が泣いていると………、胸がザワザワする」
A「え…」
信長「家康に、泣かされたのか?」
A「ち、ちがいます…!」
信長「…………そうか」
織田さんはそう言うと、私の腕を掴んでいた手を離し、そっと私から離れて屋上を去っていく。
A「…あに様…」
信長「ん?俺は貴様の兄ではないぞ」
A「ごめんなさい。
織田さんは、兄に似ていたので……」
信長「おお、そうか。貴様の兄に似ているのか」
A「………ええ」
…泣きたくなるほどに。
何を考えているのか分からないところも。
そのくせ、誰よりも周りのことを考えているところも。
彼を通して、遠い遠い記憶の兄を思い浮かべる。
信長「…なら、泣きたくなったら俺に言え。
知らないところで泣かれるのは………嫌だ。
俺を頼れ……兄のように」
振り返らずに、背中を向けたまま、織田さんはそう言って、屋上をあとにした。
A「ありがとう、ございます……」
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作者名:まる | 作成日時:2022年9月23日 16時