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泣き疲れたのか寝てしまったキリトをベッドに寝かせ、私はその端に座った。
窓から差し込む月の光が虚しく私たちを照らしている。
人の死に直面する光景は何度体験しても慣れないものだ。
このSAOが始まった1ヶ月で命を落とした者の数は2千人にも昇り自決する者も多数いた。
その中には私とコンビを組んでいた友人も。
ともに生き残ろうと言った矢先の出来事で、実感がわかなかったこともまだ覚えている。
それ以来、私はソロで活動しパーティーを組んでも短めで当たり障りのない接し方をしている。
親しくなればなるほど後が怖くてたまらなくて、人との関わりを避けていた。
彼もまた人との関わりを避けているように見えたからだ。
だから、彼が黒猫団に入る時 最悪の自体を想像し少し不安になったっけ。
…想像しなきゃよかったな。
あの時 助言していたら何かが変わっていただろうか。
そういう意味では、私も彼と同罪といえる。
私は自傷気味に笑うとうなされるキリトの頭に手を置いた。
せめて夢の中では安らかに過ごせるように。
手を伝って彼の罪意識が少しでも私に流れるように。
私は反対の手でメニューウィンドウを開きメッセージを打った。
「……」
しかし指は送信のボタンを押す前に止まり その横のキャンセルボタンに滑った。
しばらくメニューウィンドウを眺めたあと、閉じて窓の外に目を流す。
開けられたせいか風が入り私たちを優しく撫で過ぎ去っていった。
私もこの風のように優しくあっさりでありたいものだ。
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シオン(プロフ) - 続き待ってます (2021年10月20日 18時) (レス) id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
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