ノヴィルーニオ・ストーリア【SAO】 (ページ9)

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転移門広場から私は出来うる限りの俊敏さで黒猫団が寝泊まりしている宿屋へと向かった。

部屋へと続く酒場の階段を上がる中リーダーのケイタがこちらに歩いてきた。
私は迷うことなく声をかける。
かけた瞬間私は間違いを自覚した。
彼の絶望に染まる顔色を目にしたからだ。

『ケイタ、く「……Aもなのか」？』
意味がわからず口ごもると、イラついた表情で彼は口を開けた。

「Aもキリトと同じで俺たちを騙していたのか！？」
こんなに荒々しいケイタを私は初めて見た。
そんなに付き合いは長くないが、基本的に穏やかな表情の多い彼がここまで荒ぶるのはよっぽどの事だろう。
私は説明を求める。
だが、彼は自傷気味に「俺の言葉より彼の言葉がよっぽど分かるんじゃない？」と吐き捨て私の横を通り過ぎて行った。

頭に疑問符を浮かべながら見送った矢先、今度はキリトがヨロヨロと覚束無い足取りでこちらへと歩いてきた。
私は慌てて支える。
何があったのか問おうと口を開いたが言葉を発する前に閉じられる。
ケイタとは違う絶望を携えた瞳が、体の震えがキリトを支配していたからだ。

「追わなきゃ……止めなきゃ」
仕切りに呟かれる言葉を頼りに、私はケイタの後を《追跡》スキルで追った。

たどり着いたのは町外れのアインクラッド外周部。
探していたケイタはためらうことなく柵を乗り越え、無限に広がる虚空へと落ちていった。
止める間も、なかった。
あっという間の出来事に、流石の私も言葉を失いその場に立ちつくすばかりだ。

何とか宿屋に戻った私たち。

昨日貯まったお金で拠点を買うことになったこと。
ケイタが買いに行っている間に、空(から)になった資金を貯めるためにいつもよりレベルの高い第27層の迷宮区に行ったこと。
そこで罠にハマり転移結晶の使えないその部屋で自分以外のメンバーが命を落としたこと。

キリトは、ポツリポツリと言葉を落としながら同時に感情というものも削ぎ落ちていってる気がして私は思わず
彼を頭ごと抱きしめ言葉を物理的に止めた。
それでも紡ごうとする彼の言葉を遮るように
『もういい。もういいからｯ…』言葉を被せる。
本当は全て話した方が彼のためになるかもしれない。
でも、それでは遅い気がしてならないのだ。
次第に嗚咽とともに涙を流す彼の頭を、私は抱きしめながら優しく撫で続けた。

話してくれてありがとう。頑張ったね。

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