裏に潜む ページ44
*
私の依頼主はグリムロックさん……を経由したヨルコという女性とカインズという男性だ。
カインズ……昨夜 圏内で死んだとされる男性。
しかし彼は今も生きている。
これは偽装された事件なのだ。
今回は、その裏方役を依頼されたというわけ。
この事件を調べていたキリトやアスナには申し訳なさ過ぎて顔を合わせたくなかったのに、あの団長殿は余計なことを……
ブチブチと悪態を(もちろん心の中で)呟きながら立っているのは屋根の上。
私は渡された黒のフーデッドローブで身を隠し、2ブロック先の建物の窓を見ていた。
もちろん、誰にも見つからないよう隠蔽スキルを発動中だ。
窓の中には依頼主の1人であるヨルコのウェーブのきいた黒髪が見える。
厚着で見えないが、彼女の背中にはスピアと同じ人が作ったダガーが刺さっている。
今回も偽造殺 人を決行するらしい。
部屋に誰か入ってきたのが見えた。
「(……うーわー)」
声に出さないがローブの下はきっと引きつった顔をしているだろう。
そうだよな。2人はこの事件のこと調べてるもんなぁ。
見知った顔が2つともう1人──確かシュミットだったか──はヨルコと話している。
そして、彼女の体が不自然に痙攣し窓から身を落とした。
一瞬、目が合う。
ここからが私の仕事だ。
ヨルコが落ちた窓から誰かが勢いよく飛び出してきた。
同時に私も後方へ逃げるように駆けだす。
その影はまっすぐ私を追って来た。
「待て!!」
影──キリト──は凄い気迫で迫ってくる。
流石は黒の剣士だね。
けれど、速さなら負けないよ。
ある程度逃げたら転移結晶で跳ぶ。
第19層 【ラーベルグ】
転移先で、午後5時を告げる鐘の音が私を迎え入れてくれた。
「協力して下さりありがとうございました」
主街区の広場で待っていたカインズに報酬を手渡される。
転移結晶で跳ぶ直前に投げられた
行き先もこの鐘の音に掻き消されて聞こえなかっただろうね。
キリトたちには申しわけないけども。
全て計画の内。
「貴女の背丈は俺たちのリーダーに似ている。きっとシュミットも彼女の亡霊だと思うでしょう」
『……本当にここまでで良かったんですか?』
「ええ。あとは自分たちだけでやり遂げたいんです」
リーダーの……グリセルダ無念を晴らすために。
意志の変わらない目に私は同行を諦めた。
けど、私の目的はこの後にある。
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シオン(プロフ) - 続き待ってます (2021年10月20日 18時) (レス) id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
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