赤鼻のトナカイ ページ22
*
2回目かな、HPが赤の危険域に突入したのは。
回復アイテムも底を尽きた。
頭の中で鐘が鳴る。
冷や汗が止まらない。
ニコラスは雄叫びをひとつあげると倒れ砕けて消えた。
その場には手にしていた大袋が落ちている。
『終わっ…た?』
「……みたいだな」
私は膝から脱力し崩れ落ちた。
本当に危なかった。
今更になって手が震えていることに気づいて笑った。
視界の端で入手アイテムが表示されたウインドウを確認しているキリトの後ろ姿が映る。
「……ッなんで!?」
悲鳴とも取れる荒らげた声が彼から発せられた。
後ろから覗き込むと 彼は弱々しくあるアイテムネームを指さした。
《還魂の聖晶石》
私は息を呑んだ。
そういえば蘇生アイテムが存在するとNPC間で噂していたのを耳にしたことがある。
まさかこれがその?……でも、そんなことがこのSAOで可能なのか?
これを使ったら、あの子は……
「このアイテムの説明を見てくれ……」
私はキリトに示されるまま説明欄を表示させる。
するとそこには驚くべき内容が書かれていた。
【このアイテムのポップアップメニューから使用を選ぶか、あるいは手に保持して《蘇生:プレイヤー名》と発声することで、対象プレイヤーが死亡してからその効果光が完全に消滅するまでの間(およそ10秒間)ならば、対象プレイヤーを蘇生させることができます】
およそ10秒間。
こんなの1ヶ月以上も経ったあの子たちには到底使えない。
あの子たちは……死んだ人間は二度と蘇らない。
当たり前だけど、何となくまたどこかで…という気持ちがあった私にこれは大きな打撃だ。
HPは減らないのに0になった感覚。
「……サチ」
『ッ!』
声に振り返ると、キリトは悔しそうに唇を噛み締めていた。
そうだ。彼も大切な仲間を目の前で亡くしている。
なにか心残りがあって
サチを蘇らせたくて死にものぐるいで挑んでいたのに。
黙っていたのはきっと私がまだ不安定だったから。
……ほんと、馬鹿がつくほどお人好しだな。
『戻ろう』
私の一言に彼は俯きながらも頷いてくれた。
私は彼の手を引きその場を後にする。
*
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シオン(プロフ) - 続き待ってます (2021年10月20日 18時) (レス) id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
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