検索窓
今日:6 hit、昨日:9 hit、合計:72,154 hit

赤鼻のトナカイ ページ22



2回目かな、HPが赤の危険域に突入したのは。
回復アイテムも底を尽きた。
頭の中で鐘が鳴る。
冷や汗が止まらない。



ニコラスは雄叫びをひとつあげると倒れ砕けて消えた。
その場には手にしていた大袋が落ちている。

『終わっ…た?』

「……みたいだな」

私は膝から脱力し崩れ落ちた。
本当に危なかった。
今更になって手が震えていることに気づいて笑った。

視界の端で入手アイテムが表示されたウインドウを確認しているキリトの後ろ姿が映る。

「……ッなんで!?」
悲鳴とも取れる荒らげた声が彼から発せられた。
後ろから覗き込むと 彼は弱々しくあるアイテムネームを指さした。

《還魂の聖晶石》
還魂(かんこん)……魂を(かえ)す。
私は息を呑んだ。
そういえば蘇生アイテムが存在するとNPC間で噂していたのを耳にしたことがある。
まさかこれがその?……でも、そんなことがこのSAOで可能なのか?
これを使ったら、あの子は……

「このアイテムの説明を見てくれ……」
私はキリトに示されるまま説明欄を表示させる。
するとそこには驚くべき内容が書かれていた。

【このアイテムのポップアップメニューから使用を選ぶか、あるいは手に保持して《蘇生:プレイヤー名》と発声することで、対象プレイヤーが死亡してからその効果光が完全に消滅するまでの間(およそ10秒間)ならば、対象プレイヤーを蘇生させることができます】

およそ10秒間。
こんなの1ヶ月以上も経ったあの子たちには到底使えない。

括弧(かっこ)書きでとってつけたような一文には簡潔に、されど冷徹に私たちに現実をつきつけた。
あの子たちは……死んだ人間は二度と蘇らない。
当たり前だけど、何となくまたどこかで…という気持ちがあった私にこれは大きな打撃だ。
HPは減らないのに0になった感覚。

「……サチ」
『ッ!』
声に振り返ると、キリトは悔しそうに唇を噛み締めていた。
そうだ。彼も大切な仲間を目の前で亡くしている。
なにか心残りがあって
サチを蘇らせたくて死にものぐるいで挑んでいたのに。
黙っていたのはきっと私がまだ不安定だったから。
……ほんと、馬鹿がつくほどお人好しだな。


『戻ろう』
私の一言に彼は俯きながらも頷いてくれた。
私は彼の手を引きその場を後にする。






├→←└



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (37 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
113人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

シオン(プロフ) - 続き待ってます (2021年10月20日 18時) (レス) id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:スピカ(しゃっぽ) x他1人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2020年10月6日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。