├ ページ9
＊
空を埋め尽くす真紅のパターンの中心部分がまるで巨大な雫のようにどろりと垂れ下がった。
高い粘度を感じさせる動きでゆっくりとしたたり、だが落下することなく、空中で形を変えた。
現れたのは巨大な“人”。
身長二十メートルはあろうその人物はフードの着いたローブを纏い体全体を覆っている。
そのフードの下はこちらが見上げているにも関わらず深い漆黒が占めていた。
まるで顔など無いような。
それ故に性別も年齢さえも認知出来ないでいた。
その気味の悪い風貌が言いようのない不安感を募らせる。
周りの人達も同じだったようで「あれって
ざわめきは、上空の人物が袖を動かすことで凪と化した。
ちらりと見せた袖の中の白い手袋が異様に浮いている。
《「プレイヤー諸君、私の世界へようこそ」》
『私、の？』
「どういうことだ？」
咄嗟には意味が掴めなかった。
唖然と顔を見合せたウチと由唯くんの頭上で赤ローブの人物は話を続ける。
《「私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ」》
やはりゲームを管理する人だった。ログアウトが出ないことに対しての説明だろうか。ソレだとありがたい。
──これで現実に戻れる。そう思ったのもここまで。
次に発せられた言葉がウチら全プレイヤーを地獄のどん底へと突き落とすことになる。
《「プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない。
繰り返す。これは不具合ではなく、“ソードアート・オンライン”本来の仕様である」》
『…………ぇ』
言葉を失った。ログアウトボタンがない事が本来の仕様？何それ。
必死に思考を回すも全く理解できない。見上げると由唯くんが険しい眼差しで赤フードの人──茅場晶彦──を睨みつけている。
《「諸君は今後、この城の頂を極めるまで
このゲームから自発的にログアウトすることは出来ない」》
ふと腕の中の重みが増し、慌てて支えると 先程の男の子が気を失ったように目を瞑り倒れ込んでいた。
『だ、大丈夫？！』
無情にもアナウンスは続く。
《「……また、外部の人間の手によるナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれご試みられた場合──」》
わずかな間。
《「ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し 生命活動を停止させる」》
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シオン(プロフ) - 続き楽しみに待ってます (2021年9月28日 19時) (
レス) id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2021年7月25日 15時
