アインクラッド編 ページ5
*
ピロン─《 はじまりの地 》
『わっ!』
突然目の前に表記された文字にウチは思わず声を上げてしまった。
『はじまりの地ってこの街のことかな?』
恐る恐る門を通ってみる。
キョロキョロ ビクビク オドオド…
傍目から見たら挙動不審だろうウチの行動に近づく者はいない。
大きく拓けた広間のような空間にウチはポカーンと口を開けて呆けた。
後ろから気持ちのいい風が背中を撫でる。
その風に乗って土と葉っぱ、ほのかに何か美味しそうなものの匂いもした。
どこを見渡しても違和感のない風景に、ここがゲームの世界ではないのではないかといく錯覚さえ起こりそうだ。
また風が吹く。
ウチは“長い桃色の髪”を耳にかけながらその風景を満喫した。
……外見は気にしないで。友人の趣味だから。
誰に言うのでもなくそう心で呟くウチの顔は死んでいたろうな。
え、と。まずは何をしなきゃいけないんだっけ?
初期武器は選択制だが、友人のアバターを使っていたウチにその権限はない。
友人のレクチャーで何となく見よう見真似で左手を動かした。
人差し指を空間をなぞる様にタッチする。
すると
ポーン、という効果音とともに何か画面が出てきた。確か、メニューウィンドウ、だったかな。
こういう所はデジタルなんだと噛み締めつつも作業は止めない。
えっと身体情報……ステータスは、と。
アバター名:アイリス
ん"ん" 何とも友人らしいネーミングセンスに笑いそうになるのを必死に堪えスクロールする。
『初期装備……は今着てる服のことだね。武器は……短剣か』
これなら投げたりもできるしウチでも使えそう。
てっきり刀とか両手剣とか使ってそうだったけど意外だ。
たまに見るゲーム風景がそれな故に意外性を感じているのだ。
ってことはまずはこの世界に慣れなきゃだ。
もしウチも同じものを買えたなら、少しは役に立つってところを友人にみせたいしね。
ふん!謎の鼻息を吹いて気合い入れをした後
ウチはまた門の向こうへ行こうと歩き出した。
「ねえ、そこのお嬢さん?」
『ん?』
話しかけられた気がする。
辺りをキョロキョロ見渡すも知り合いは居ない。
『………気の所為か「んー、俺 呼んだんだけど」わっ!』
いつの間にか。と言いたくなるくらい近い距離で話しかけられた。
今度こそ視認したその人は男性でウチより背が高い。
びっくりした。
驚きに脈打つ胸を抑えながら、目の前の男性に目を向けた。
*
1人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シオン(プロフ) - 続き楽しみに待ってます (2021年9月28日 19時) (レス) id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年7月25日 15時