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『緊張させてごめんね?こういうの、苦手な事は知っていたんだけど……ここ、観光客も多いし、いつもの所の方がいろいろ融通も利くから』
言葉の意味が理解できないのか、きょとんと首を傾げる刹那。
『嫌われる前に、早めにネタバラシしとこうかな…』
そう言って立ち上がると、打ち合わせ通り、ウエイターが由唯の元にヴァイオリンを持ってきた。
口を半開きにしたまま視線を向ける刹那ににこりと微笑むと、ヴァイオリンを肩に乗せる。そして、刹那にも聴き馴染みのある日本のポップ音楽を弾いてみせた。
緊張で少し強張っていた刹那の表情が、少しずつ綻んでいくのが分かる。
流石にこの演出は目立つようで―――ぽつぽつと居た他の客の視線を集めたが、
旅の恥はかき捨てだろう―――?
レストラン側の了解は取っており、この後の計画にも協力してくれる予定だ。
大切な人のサプライズをしたいんだ―――
事情を話して交渉すれば、むしろ日本の硬いホテルよりも融通が利くからいい。
2曲ほどアレンジで披露した後、由唯の奏で出すメロディに、刹那は「あっ」と小さな声を挙げた。
バースディソング―――
日本でも馴染みのその曲に、刹那はやっとサプライズを仕掛けられたことに気づいたようだ。そのメロディをトリガーに、窓側のダウンライトが消され、奥から聞き慣れた声が歌いながら近づいて来る。
その手には、キャンドルに灯がともったホールケーキが握られていた。
「凪紗―――と、由唯くんのお友達…」
「颯汰だから!酷いな、綿貫ッ」
振り向いた刹那に、颯汰がすかさずツッコミを吐く。
ヴァイオリンの弓を動かす由唯の肩も笑いをこらえて小刻みに揺れていた。
「どう…して?」
緑の瞳を一層大きく見開いた刹那の口から、少し震えた言葉が零れる。
「どうしてって―――七瀬がアンタを酔わせて良からぬことをしでかさないかを見張りに……『しないから!!』
被せて否定する由唯を見て、こんどは颯汰が笑う。
感動のサプライズを仕掛けるはずが―――
どうしてこうも、締まらないのか。
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鈴桜(プロフ) - バイクレース勝った〜〜!!おめでとうです。続き頑張って下さい。待ってます。 (2021年10月5日 22時) (レス) @page42 id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - シオンさん» コメント有難うございます、温かく見守って頂けると嬉しいです。 (2021年10月4日 22時) (レス) id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 可愛いです。セツにチュウルやっての可愛さがあります。続き頑張って下さい (2021年10月4日 21時) (レス) @page33 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年9月16日 0時