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着替えを終えた由唯と圭吾は、マシンの移動と整備を社員達に任せ、刹那や彩子達を連れてレンタカーで市街地へと移動する。近くにカフェは幾らでもあるが、流石に先刻のレースでワンツーフィニッシュを決めたトップライダーが二人もいれば、ファンが押し寄せ店に迷惑が掛かる―――何より、彩子が人混みを嫌うから。
移動中の車内。
実際のレースを見たのが初めての颯汰が、興奮のままに由唯を質問攻め。
圧倒される刹那と葵を横目に、由唯は苦笑いで応えを返していた。
「残念だったね、圭吾。教え子に負けるなんて―――そろそろ引退?」
―――君の事だから、ワザと負けたなんて事はないだろう?
ハンドルを握る圭吾の隣で、彩子がにまにまと笑う。他人事のような彼女の言葉に、圭吾は視線を合わせることなく、口元をひきつらせた。
「―――……ははっ。貴女のせいでしょ」
「私?人のせいなんて、カッコ悪いよ?」
―――貴女のせいだ。
俺の勝利の女神が、 “由唯”を応援したから……
そんな文句を零したところで勝敗が変わるわけでもなく、確かに彼女の言うとおりに“カッコ悪い”だけ。圭吾は口を噤みその場を誤魔化した。
負けは―――認める。
確かに彼は、強くなった…雨というアクシデントにも動じることなく、己を律する精神力の強さ―――ここ数か月、ずっと練習を見て来た圭吾だからこそ、素直に負けを認められる。
これは奇跡や偶然なんかじゃない。
努力が由唯を速くさせた。
そして―――彼をそこまで追い込んだのは……
圭吾はルームミラーに映る後部座席に、視線を移す。
楽し気に話しに花を咲かせる由唯と、その隣で笑う黒髪の少女。
紛れもなく彼女が、由唯を変えた―――。
“誰かの為”に闘うヤツは―――強い
自らが由唯に告げた言葉を、圭吾は己の胸の中で咀嚼していた。
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軽食を終えて向かったのは、彩子が宿泊するホテル。
医師として世界を飛び回る彩子は、そう何日も休暇を貰えるわけではない―――明日の夜にはイギリスに戻らなければいけないのだ。
刹那の誕生日当日を一緒に過ごすことはできないけれど―――せめて一日、一緒に居たい。
この海外遠征は、そんな彼女の願いを叶える為の計画でもあった。
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鈴桜(プロフ) - バイクレース勝った〜〜!!おめでとうです。続き頑張って下さい。待ってます。 (2021年10月5日 22時) (レス) @page42 id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - シオンさん» コメント有難うございます、温かく見守って頂けると嬉しいです。 (2021年10月4日 22時) (レス) id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 可愛いです。セツにチュウルやっての可愛さがあります。続き頑張って下さい (2021年10月4日 21時) (レス) @page33 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年9月16日 0時