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眼下に広がるのは、サーキット。
今日はここで、ライダー達がしのぎを削り合う……
そう。
バイクレースの海外遠征だ。
由唯にとっては、このサーキットでの海外遠征はほぼ毎年の事。
だが、今年は勝手が大分と違う……
参加するのは、由唯だけではない。
元モトレースチャンピオン…七瀬圭吾がレースに参戦するのだ。
レースで使用するマシン(バイク)は、前日に社員達が整備を済ませてくれている。
1年ぶりのコースに、先ずは軽く当たりつけ(慣らし運転)を行う。
この日の為に、由唯はずっと練習を重ねて来た。予選もトップグループで通過し、その辺の海外勢などに負ける気はない―――
いつもレースの前は、決まって冷静でいられるのに。まだレースが始まってもいないのに、心音が嫌に煩かった
―――それは、隣にこの男がいるからだ。
へらへらと笑いながら社員達と雑談を交わす圭吾。
もう10年以上まともなレースに参加していないはずなのに、その余裕はどこから来るのか……
圭吾がそこに居るだけで、心を乱されるのは由唯だけではない―――
かつてのトップレーサーの姿に、会場入りする人々の視線が集まっていた。
長年、ポールポジション(トップの座)を守り続けた…これが、七瀬圭吾の実力だろう。
集まる視線を一瞥すると、圭吾は緊張感のない弾んだ声をあげる。
「何だよ俺、睨まれてる?みんな年寄りに優しくないねぇ〜」
由唯と同じく、予選をトップクラスで通過したくせに、よく言う―――。
『―――……安心しろ、今日は引退勧告叩きつけてやるから』
キャップを目深に被り、空輸しておいたレーシングスーツに着替えて手足を伸ばす由唯に、圭吾もまた視線を向けていた。レース前、由唯が他ライダー(ライバル)を意図せず煽る事はよくある事だが……
―――いつもは、第三者的立場で苦笑いを浮かべ、その様子を聴いていた。
だけど 今日は違う……
静かな飴色の瞳は、明らかにこちら(圭吾)を射貫いていた。
いつからコイツは、こんな瞳をするようになったのだろう―――
氷のように静かな自信が まだ幼さの残るその顔から溢れ、プレッシャーを与える。
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鈴桜(プロフ) - バイクレース勝った〜〜!!おめでとうです。続き頑張って下さい。待ってます。 (2021年10月5日 22時) (レス) @page42 id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - シオンさん» コメント有難うございます、温かく見守って頂けると嬉しいです。 (2021年10月4日 22時) (レス) id: cbd072c832 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 可愛いです。セツにチュウルやっての可愛さがあります。続き頑張って下さい (2021年10月4日 21時) (レス) @page33 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年9月16日 0時