専属? 【由唯 side】 ページ48
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「由唯くんの執事姿、見たかったのに―――」
二人きりの時の名前呼びも、すっかり板についてきた。クラスにいる時、苗字呼びに戻ってしまうのは―――致し方ない。まだ、付き合っている事を公にはしていないからだ。あえて色恋話を自ら晒すのも憚れ、クラスの中での由唯は、そういうキャラでもない。
(俺の、刹那への態度から 多分、そのうち自然と知られるだろう―――)
刹那は―――どんなふうに伝えたのだろう。
始業式の日。
“準備できるまで待つから”と伝えた当日に、刹那は行動を起こしてくれた。
彼女の性格を考えるに、あの数時間で心の整理がついたとも思えない―――となれば、第三者の助言があったのだろう。
もっとも考えられるのは彼女が尊敬する“せんせい”だが…彼女に何か、相談したのだろうか。
セツを膝に抱き、学校帰りに一緒に買ってきたカフェオレのストローを咥える刹那を横目見る。
『―――……(あれこれ詮索するのは、低俗だな。やめよ)』
由唯は、視線をカフェオレに戻した。
「由唯くん、聴いてる?」
『ん、え?』
「だから、由唯くんの―――執事姿」
『―――似合わないよ。 あーでも…』
せっちゃん専属のパドラーなら、吝かではないけれど?
刹那の横髪を一束すくい上げ、そっと口づけてみる。
『ご指示がありましたら何なりと―――刹那お嬢様?』
ずささささ……
ソファーの真ん中に座っていたはずの刹那は、勢いよく端っこに逃げてしまう。
耳を赤く染める彼女の反応を見れば、嫌がられたわけではなさそうで…寧ろ―――。
『どうしたの?お嬢様…逃げないで―――?』
「もっ、もぉ!由唯くんッッ!!」
可愛いこの反応は、きっと“照れ隠し”だと、都合のいい解釈を脳内で展開させた。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月9日 9時