新学期 【由唯 side】 ページ46
新章――――恋人編……
*
新学期が始まり、LHRの話題は専ら”文化祭”について―――。
来年になれば進路の話が本格化している為、全力で愉しめるのは今年が最後だろうか。
「何か提案ある人―――」
と、委員長が声を挙げれば、お化け屋敷だの演劇だの模擬店だの……次々とホワイトボードに妙案が並ぶ。
このクラス、中々に仲が良くてノリも良い。
議論が交わされる中、圧倒的支持を得たのが―――
仮装喫茶。
メイド・執事に扮した生徒達が、客を”ご主人様”としてもてなすのだ。
幸い、このクラスには女子生徒を中心に料理の心得のある生徒が多く、それは夏季休暇中に行われた林間学校で証明されている。
これは行ける―――なんだったらクラス対抗MVPも狙えるのでは…と、生徒達のモチベーションはどんどんと上がっていった。
―――この男を除いて……。
(メンドクサイ―――)
窓側真ん中の目立たない席で、頬杖をついて外を眺める由唯。
元々、クラスの輪の中に入るのは苦手であり、学校行事は内申点を下げない為の参加。
可能なら、どこかでサボりたいのが本音である。
メニューは何にする?役割分担は?―――
「由唯は役割どうする?」
『買い出し担当で。割れ物以外なら(ツーリングがてら)遠くても行くよ』
―――任せて?
即答する由唯に、「バイクで出かけてさぼる気でしょう?」とクラスの女子が指摘する。
(こういう時、女性の方が勘が鋭いのは どうしてだろうか……)
心の中で舌打ちする由唯。
前に座る友人は、「ラッキー、だったら買い出しは由唯に任せようぜ」と言ってくれたのに。
「七瀬は執事やってよ!」
―――似合うと思うよ?
誰が言い出したのか、ウエイター役の提案がされる。
『無理。却下。絶対嫌』
サボれないし、好きでもない事に笑顔作って振りまくのは疲れるから、これだけは絶対に嫌だ。断固拒否を伝えると、友人達も同意してくれる……
「由唯に、接客は無理だろ―――見てみ、この不愛想!客逃げるっての」
「止めとけ。このバイクバカに、そんな気の利いた役が出来るわけない」
―――……こいつ等。言いたい放題言ってくれているが、今だけはこの上ない応援演説だ。
(イベントバイトで接客業をしていた事は、黙っておこう)
やはり、持つべきものは男友達だろう―――。
彼等の推薦もあり、由唯は”買い出し係”を守備よく勝ち取った。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月9日 9時