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化かし合い 【由唯side】 ページ5



『何しに来た』

朝から鳴るインターホンの画面を見て、由唯は顔を引きつらせた。

「お一人暮らしだと伺ったので―――僭越ながら家事をお手伝いさせて頂こうかと……」


インターホンの画面前で柔らかく微笑むのは、見合い相手だった須藤千世。

(―――こんなところまで来るのかよ……)
先日、バイクイベントのブースに押しかけて来た所を見ると、想定していなかったわけではない。


『―――…僭越ですね。間に合っていますので結構です。”他人”に部屋に入られたくない』

「他人だなんて―――私は、由唯さんの婚約者ですのに」
『私は了承していません。当日にはっきりお断りしたはずですが?』
「あら―――七瀬の家の方からはお断りを頂いておりませんし、私は正式に、お受けするとお返事させて頂きましたよ?」

一向に引き下がる気配を見せない強気の態度。
やはり。親達の間で結託されていた話という事か―――

「どうか開けて下さいませんか?女性をいつまでも外に立たせておくのは、紳士のすることではございませんよ?」
『――― 一人暮らしの男の家に朝から押しかけるのも、令嬢としてどうかと思いますけどね…』


(寝起きでも、この程度の口論なら負ける気はしない――)
モニターの前で、由唯は右手首のミサンガに触れた。

「―――そうですわね。由唯さんに、はしたない所をお見せしてしまいました…。今日のところは失礼させて頂きますが―――今度は身の回りのお世話を、させて下さいね?」
『お断り、します』


乱暴に、通話を切る由唯。
これ以上の会話は、口の悪さを露呈してしまう―――

ヤバい―――イライラする。
最悪な朝だ……。


『気分転換に、走りに行こ』
洗面所で顔を冷やすと着替えてヘルメットを被る。

『セツ―――いい子にしていてね?』
リンと鈴を鳴らす仔猫に小さなキスを落とし、由唯は家をでた。


マンションの駐輪場に停めた愛車に跨り、ヘルメットのスモークシールドを降ろす。
右手を煽れば、小気味のいいエンジン音が、高ぶった気持ちを鎮めてくれる―――

バイクに乗ると、家にいる時よりもずっと思考がクリアに働く
このまま後手に回るつもりはない…

考えろ―――先を読め……
  あいつ等を、出し抜く術を 捻りだせ。




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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年8月9日 9時

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